公害国会+50:行動の10年のはじまり

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2020年10月01日

  • 岡野 武志

急速な工業化に伴って、産業公害は深刻な社会問題となり、1970年に開催されたいわゆる公害国会(第64回国会)では、公害問題について集中的な討議が行われた。この国会では、公害対策に関連する14の法案が可決され、それまで公害対策基本法(1967年)などにみられた経済調和条項(生活環境の保全について経済発展との調和を求める条項)は削除された。環境関連の法律に「公害犯罪」という考え方が導入され、直罰規定や両罰規定が盛り込まれるとともに、地方公共団体による上乗せ規制が許容されるなど、事業活動に伴って人の健康を害する行為は強く規制されるようになった。

1990年代になると、エネルギーや資源の消費拡大などに伴う地球環境への影響が深刻になり、1992年にリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)では、人類共通の課題として、地球環境保全に向けた方策が話し合われた。国内でもこの年に環境基本法制定に向けた検討が進められ、翌93年には同法が成立して、公害対策を中心としてきた法規制は大きく方向修正された。生活排水や生活ゴミ、自動車の排出ガスなど、人々の日常生活が及ぼす影響が拡大してきたことを受け、環境基本法は事業活動だけでなく、日々の暮らしにおいても環境負荷の低減に努めることを求めている。

地球サミットから20年後の2012年に開催された国連持続可能な開発会議(リオ+20)では、「我々の求める未来」と題する成果文書が採択され、持続可能な開発目標(SDGs)についての議論が開始された。SDGsはミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年の国連サミットで採択されている。MDGsが主に開発途上国に焦点を当てた目標であったのに対し、SDGsは先進国を含めたすべての国で取り組むべき普遍的な目標と考えられている。持続可能な開発を実現するためには、規制や努力義務に伴う受け身の対応だけでなく、あらゆる主体の能動的な取り組みが重要になる。

公害国会から50年となる2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの人々が働き方や暮らし方を考え直す契機の年となった。国際情勢の変化や相次ぐ自然災害などに伴い、事業活動やサプライチェーンなどのあり方を見直す動きも少なくない。このような新たな時代に向けた動きに、遠く離れた地域や国を視野に入れた選択や、将来世代にも思いを巡らせた行動が広がれば、持続可能な開発に近づくことが期待できる。2020年はSDGs達成に向けた「行動の10年」のはじまりの年でもある。

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