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日本のために「美味しく楽しく」収穫しよう!

2020年09月15日

経済調査部 研究員 矢澤 朋子

英国では、農業の労働力確保のため“Pick for Britain”というキャンペーンが実施されている。その意味するところは「英国のために収穫しよう」であり、国内で農業従事者を広く募集するための政府のキャンペーンである。

英国では農業従事者の約8%を占める2万7,000人ほどが外国人であり(2016年、4四半期平均)、それ以外におよそ7万5,000人の外国人が毎年夏に季節労働者として訪れるといわれている(※1)。しかし、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のための出入国制限により十分な外国人労働者を確保できず、労働力不足に苦しんでいる。チャールズ皇太子もSNSサイトで同キャンペーンへの参加を国民に呼びかけており、その効果もあったせいか、今後数週間の求人は埋まっている模様である(9月7日時点)。

しかし、この農業従事者不足は英国に限った話ではない。

日本においても、出入国制限によって農林業に従事する外国人のほとんどを占める「技能実習生」が今年4月以降減少している(※2)。農林業は春及び初秋に労働需要が高まる傾向があるが、4月以降の同産業就業者数は例年より低い水準に留まっている(上図参照)。他方で、コロナ禍による経済活動の縮小によって4月以降急速に低下している有効求人倍率は、農林漁業ではほぼ横ばいで推移しており労働需要は堅調である(下図参照)。

農林業就業者数

職業別 有効求人倍率(パート含む常用)

日本政府は補正予算で「農業労働力確保緊急支援事業」を実施し、農業従事者の獲得を後押ししている。さらに、新型コロナウイルスの影響により実習や就労が難しくなった技能実習生や就労目的の在留資格で働いていた外国人を、農業・漁業を含む特定産業分野へ移行させるマッチング支援を行っている(※3)。ただし、これらの施策は緒に就いたばかりである。また、国内であっても依然として人の移動には慎重さが求められる状況であり、これら対策の効果は未知数であろう。

労働力不足に悩む農業地域は、コロナ禍の影響で不振となった他業種の就業者とのマッチングを行い労働力の確保に努めている。例えば、群馬県嬬恋村では村内の宿泊施設の従業員や緊急帰国を余儀なくされたJICA(国際協力機構)の青年海外協力隊員を受け入れている(※4)。また、福島県では就労を希望する福島大学の学生を福島市と伊達市の果樹農家で受け入れたり(※5)、徳島県ではプロ野球独立リーグに所属する「徳島インディゴソックス」の選手を短期的に受け入れたり(※6)するなど、ユニークなマッチング例も見られる。このような努力の甲斐あって、農作物の供給が滞るほどの深刻な労働力不足には陥っていない。

9月に入り、すでに本格的な秋の収穫期となった。緊急事態宣言発出後、イチゴなどの観光農園は休園を余儀なくされ、急遽果実の摘み取りなどに奔走した園も多いと聞く(※7)。筆者も毎年恒例のイチゴ狩りは自粛したが、食べ頃を迎える葡萄、りんご、梨、キウイ、栗、サツマイモなどの収穫期は逃したくない。観光農園での摘み取りは3密を避けて楽しめるアクティビティであり、かつ誰もが無理せずに参加できる農作業の一種と言えるのではないだろうか。秋の週末、観光農園巡りのチャンスを窺うこととしよう。

(※2)入国者数から出国者数を控除した純流入者数がマイナス(純流入)となった。
(※3)受け入れ先が見つかった場合は「特定技能」の在留資格を付与する。

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