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「デジタル」と「リアル」のサービスの価値~ウィズコロナとアフターコロナの新常態

2020年08月31日

経済調査部 研究員 永井 寛之

本日8月31日は例年であれば多くの地域で夏休みの最終日である。コロナ禍での夏休みの過ごし方は通常とは様相が異なったようだ。

公益財団法人日本生産性本部の「第2回 働く⼈の意識に関する調査」(2020年7月21日)では、夏休みの過ごし方について質問しているが、「家で過ごす」が45.4%で最も多かった(複数回答)。7月6~7日時点での調査だが、6月下旬以降の感染再拡大を背景に旅行や帰省を控える動きが反映された結果である。

このような消費者の選好を反映して、家にいながら旅行や帰省を疑似体験できるオンライントリップといったサービスが注目されている。感染拡大の長期化が予想される中、接触や移動を伴うサービス業ではオンラインで体験するようなコンテンツが定着するかもしれない。ウィズコロナの状況はワクチンが世界的に普及するまで続くとみられ、既存の接触や移動を伴うサービス業がコロナ禍以前の消費水準にまで戻るには相当程度の時間を要する。企業による既存業態のオンラインによる代替の試みもしばらく続くだろう。

5G(第5世代移動通信システム)の導入拡大により、仮想空間を作り上げるVR(Virtual Reality:仮想現実)の性能が向上することもこうした動きを後押しするだろう。実際、音楽業界ではVRによるライブの配信などを始めている。5Gは「超高速通信」、「超低遅延通信」(自動運転や遠隔操作を可能にする)、「多数同時接続」、の3つの要素を備えている。コロナ禍の陰に隠れてはいたが、3月に携帯電話において5Gのサービスが始まるなど、2020年は5G元年といわれる。

5GとVRの相性は良いとされる。例えば自宅にいながら五感に訴えるVRのサービスが実用化されるなどさらに技術革新が進めば、感染リスクのある消費を中心に潜在需要を掘り起こし、市場が拡大するとみられる。他方、オンラインによる市場のウェイトが高まるのであれば、リアルで消費する意義についても問われる。リアルでのサービスは安全性を確保して提供するためのコストがかかる。コストを転嫁した価格でサービスを提供するためには、消費者に付加価値の高いサービスを効率的に提供することが求められる。消費者はリアルとオンラインの性質や価格などを比較考量しながら、両者の消費量のバランスを取ろうとするだろう。

コロナショックにより接触や移動を伴うサービス業を中心に経済は大幅に落ち込んだ一方、経済社会のデジタル化が半ば強制的に推進された。オンライン診療やテレワークのように、以前から社会的要請はあったが普及に至らなかったものが急速に普及しており、感染リスクのある消費に関してはオンラインにおいて新しいビジネスの萌芽も見られた。アフターコロナ下でもデジタル化の流れは継続することが予想される。そのような中、リアルでしかできないこととリアルである必要のないこと、リアルとデジタルが共存することなどサービスの多様化が進むと考えられる。ただし、リアルでのサービスは一定の需要が残るものの、コロナ禍以前には発生しえなかったコストを回収するためには、今まで以上に消費者のニーズをくみ取り、高い付加価値を提供する必要があるだろう。

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