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コロナ危機を「追い風」にドイツでEV・PHVの販売急増

2020年08月20日

経済調査部 経済調査部長 山崎 加津子

ドイツで電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の販売が急増している。ドイツ自動車工業会(VDA)の発表によると7月のEV・PHV等の新車登録台数は約3.6万台で、前年比では288%増となった。内訳はPHVが約1.9万台(同485%増)、EVが約1.7万台(同182%増)などである。

7月の販売急増の理由としては、6月初めにドイツ政府が決定した経済対策がまず指摘できる。新型コロナウイルス感染の抑制のために実施した都市封鎖(ロックダウン)はドイツ経済に深い爪痕を残し、4-6月期のGDP成長率は前期比10.1%減(年率換算34.7%減)と落ち込んだ。ドイツ政府は経済対策の一環として、EVとPHVの購入奨励金を2021年末までの期間限定で増額することを決め、EVの購入奨励金は最大9,000ユーロ(約113万円)、PHVの購入奨励金は最大6,750ユーロ(約85万円)に引き上げられた。また、7月から12月までの半年間に限り、日本の消費税に相当する付加価値税(VAT)を19%から16%に引き下げることも決まったが、これはもちろん自動車を購入する際にも適用される。

以上のような「期間限定でお得」な支援策は倹約好きなドイツ国民にアピールし、EVとPHVの販売拡大の追い風になったことは間違いない。ただし、これらの経済対策がまだ存在しなかった今年1-5月のEV・PHV等の累計販売台数も前年比92%増となり、同期間の新車販売が全体としてはロックダウンの影響で同35%減と急減したのとは対照的であった。新車登録台数に占めるEV・PHV等の割合は昨年半ばまでは3%前後で推移していたが、年末以降は上昇傾向をたどり、3月に9.2%に上昇したあと、7月は11.4%と初めて10%を超えた。

2019年末以降にEVとPHVの販売が加速したのは、ドイツ政府と自動車業界とが2016年から取り組んできた普及促進策が成果を上げ始めたためと考えられる。具体策としては、政府と自動車業界が折半の負担する購入奨励金の導入と強化、ガソリンスタンドに相当する充電施設の増設、EVとPHVのラインアップの強化などである。特に2019年11月には販売奨励金をEVは最大6,000ユーロ、PHVは最大4,500ユーロと従来の水準から1.5倍に引き上げ、実施期間も2025年末まで延長した。加えて、充電施設を全国規模で整備するべく、2030年までに100万カ所に増やす目標が掲げられた。

EV・PHV等の普及促進のねらいは、欧州連合(EU)が掲げる「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」という目標の達成である。中間目標として2030年の排出量は1990年比50~55%削減することになっており、ドイツはこれを主に輸送部門で達成しようとしている。中間目標達成には、2030年までにEV・PHV等を700万~1,000万台(ドイツで保有されている乗用車の15~20%に相当)普及させる必要があるとされ、まだまだ道のりは半ばだが、この7月の販売台数急増は大きな一歩と考えられる。コロナ危機が思いがけず追い風となったEV・PHV等の販売拡大をさらに促進するために、充電設備の整備促進、EV・PHV等の生産能力の増強、1回の充電での走行可能距離の延長などが今後必要な取り組みとなろう。

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