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新型コロナで変わるキャッシュレス決済の主戦場

2020年08月18日

金融調査部 主任研究員 長内 智

政府のキャッシュレス推進策である「ポイント還元制度(キャッシュレス・ポイント還元事業)」が6月に終了し、9月から新たな「マイナポイント」制度が開始される影響なのか、最近キャッシュレス決済に関する話題が再び増えているように感じる。これには、日本の消費者にポイント好きの人が多くいることも関係しているのだろう。

今後の日本のキャッシュレス化を展望する上で、新たなキャッシュレス推進策の効果が大きな焦点となることは間違いなく、筆者の2月の当コラムでも少し紹介させていただいた(※1)。ただ今回注目したいのは、想定外の新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大によって消費者の行動が大きく変化し、キャッシュレス決済の主戦場に変化が出ているという点である。

新型コロナの影響が拡大する前は、日本のキャッシュレス決済の主戦場といえば街の「店舗」での支払いであった。そこでは、クレジットカードのほか、様々な電子マネーやQRコード決済が独自のキャンペーンを打ち出してシェア争いをしていた。しかし、新型コロナの感染拡大を防ぐため、政府が4月に緊急事態宣言を発出し、外出と営業の自粛を要請したことで状況が一変した。

ネット通販や動画配信サービス、食事の配送サービス、オンラインゲームといった「巣ごもり消費」が活発化することとなり、消費者の支払いの場を「店舗」から「ネット」へと大きくシフトさせたのである。そして、ネットで支払う場合には、ほとんどキャッシュレス決済が利用される。つまり、新型コロナ後の緊急事態宣言に伴う外出と営業の自粛要請は、ネットでのキャッシュレス決済の利用拡大を促すという副次的効果をもたらしたのである。

こうした状況は総務省の「家計消費状況調査」で確認できる。インターネットを通じて注文をした世帯の割合は4月に大きく上昇して過去最高を記録した。季節的にみて、年末商戦のある12月でなく4月に大幅な上昇を示すのは極めて異例のことであり、その主因として外出と営業の自粛要請の影響を指摘できる。さらに、翌5月に一段と上昇して僅かながらも統計開始以来、初めて50%を超えた(50.5%)点も注目される。

このように巣ごもり消費の増加は、キャッシュレス決済の主戦場をネットへとシフトさせたわけであるが、そこでの支配的な決済手段がクレジットカードであることも見過ごしてはならないポイントだ。近年、キャッシュレス決済手段のシェア争いで攻勢をかけていたQRコード決済にとって、巣ごもり消費の増加は逆風として吹いているのである。

緊急事態宣言が5月に解除されて経済活動が少しずつ正常化に向かうなか、ネットから店舗での消費へと回帰する動きが進んでいるものの、新型コロナの発生前と比べると、人との接触を避けられるネットショッピングに対するニーズは依然として高い。昨年10月に「ポイント還元制度」が開始された際には全く想像できなかった新型コロナ後の「新しい生活様式」が日本のキャッシュレス化の展開に今後どう影響するのか、新型コロナの感染状況と並行してしばらく注目しておきたい。

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