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改めて問う。なぜ、社外取締役なのか?

~「社外取締役の在り方に関する実務指針(仮称)」の意義~

2020年07月29日

金融調査部 主任研究員 横山 淳

2015年にコーポレートガバナンス・コード(CGコード)が制定され、独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきことが盛り込まれた。これを受けて2019年には、東京証券取引所(市場一部)上場会社の93.4%が、複数の独立社外取締役を選任している(※1)。さらに、2019年の会社法改正(未施行)で、上場会社などを対象に1名以上の社外取締役の選任が法律上の義務として定められた。わが国の上場会社において(独立)社外取締役は定着したようにみえるが…。

2020年5月13日、経済産業省CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)に社外取締役のアンケート調査の結果が示された(※2)。その内容に多くの委員が驚きを隠せなかった様子が議事要旨にも記録されている(※3)。

(株主やステークホルダーではなく)「社長、会長をはじめとする執行陣のために行動する」ことを「最も重視」と回答した社外取締役 11.5%
(役割として)「経営陣の指名・報酬プロセスへの関与」を「最も重視」と回答した社外取締役 6.9%
社長・CEOが自身の指名を主導したと認識している社外取締役 65.0%
「社外取締役の発言や質問により、決議案件が再検討・修正されたことはない」と回答した社外取締役 39.9%

このままでは、ガバナンス改革が画竜点睛を欠くことにもなりかねない。そうした問題意識もあったのであろう、CGS研究会は「社外取締役の在り方に関する実務指針(仮称)」(「社外取締役実務指針」)のとりまとめを進めている。「社外取締役実務指針」とは、会社法及びCGコードの趣旨を踏まえ、社外取締役の在り方(役割と具体的な取組等)について実務的な視点から整理した、社外取締役を主な対象とするガイドラインである。

6月9日開催のCGS研究会に提出された「社外取締役実務指針」案(※4)では、「社外取締役の5つの心得」という章が設けられ、その最初の「心得」において、社外取締役の役割が次のように整理されている。

「≪心得1≫社外取締役の最も重要な役割は、経営の監督である。その中核は、経営を担う経営陣(特に社長・CEO)に対する評価と、それに基づく指名・再任や報酬の決定を行うことであり、必要な場合には、社長・CEOの交代を主導することも含まれる。」

取締役会が社長を選ぶのであって、社長が取締役会を選ぶのではない。これは、アングロサクソン型ガバナンスの専売特許ではなく、典型的日本型ガバナンスである監査役会設置会社にも当てはまる会社法制の「大命題」である。しかし、社長の指揮命令下にある業務執行取締役のみで構成された取締役会では、法的にはともかく、現実問題として上司である社長を評価し、必要な場合には交代を主導することを期待しても無理がある。そこで、経営陣から独立した社外取締役を中心として、会社法が本来意図するモニタリング機能を取締役会に取り戻そう、というのが、ガバナンス改革における大きな柱であるはずだ。

「またか」と感じられた読者の方もおられるだろう。しかし、前記のアンケート結果は、これまで繰り返し指摘されてきたことが、まだ現場には十分浸透していないことを示している。ガイドラインの策定を契機に関係者の理解が進むのであれば、その意義は大きい。

「社外取締役実務指針」に期待したい。

(※3)経済産業省「CGS研究会(第2期)第17回議事要旨」。前注のウェブサイト掲載。

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金融調査部
主任研究員 横山 淳