民泊新法施行2年、厳しい環境とウィズコロナ、アフターコロナ時代に向けて

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2020年06月24日

  • 経済調査部 市川 拓也

令和2年6月15日で、住宅宿泊事業法が施行されてから2年が経過した。本来であれば東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、盛り上がりを見せているはずの民泊の利用が大きく落ち込んでいる。観光庁の「民泊制度ポータルサイト」にある最新の「住宅宿泊事業の宿泊実績について」(令和2年5月20日)を見ると、令和2年2月~3月の宿泊者数は約18万人で前2か月(令和元年12月~翌1月)の約30万人から約4割減となっている。国内の宿泊者数は前回比で微増となったが、海外からの宿泊者数が約6割減となったことが背景にある。

日本政府観光局(JNTO)によると、本年4月及び5月の訪日外客数は前年同月比で実に99.9%減(推計値)を記録した。民泊は訪日外国人の受け皿となっていただけに、今般のインバウンド需要の落ち込みは民泊事業者を震撼させたに違いない。上記「民泊制度ポータルサイト」の「住宅宿泊事業法に基づく届出及び登録の状況一覧」では、令和2年6月11日時点の事業廃止件数は5,458件と2か月連続で前月比約15%増となっており、届出住宅数は20,766件と2か月連続で前の月を下回っている。ついに届出住宅数が減少局面に入ったことをうかがわせる。シェアリングエコノミーの中にはオンラインによるシェアもあるが、リアルな宿泊施設をシェアする民泊の場合、新型コロナウイルスの感染拡大による影響をまともに受けている様子である。

コロナ禍の影響は今後も続くとみられ、しばらく民泊運営は苦難を余儀なくされるであろう。特に賃貸物件で行っているところは経営的に非常に厳しいことが推測される。しかし、見方を変えてコロナ禍による人々の収入減に着目するならば、ウィズコロナ、アフターコロナでは少しでも安く泊まりたいという需要が出てくるとも考えられる。同様に、空いている部屋を貸し出すことで少しでも収入減を埋めたいと思う者も出てこよう。いくら低価格であっても安全性(新型コロナウイルスに対する衛生面)より優先されるとは考えにくいが、ホテルでは得られない家庭的な雰囲気の体験などの魅力が新型コロナウイルスの影響で失われるわけではない。入国管理が緩和されインバウンド需要が戻りやすい環境になれば、国内需要と相まって徐々に客足も増加していくと推測される。民泊事業者としては現状の厳しい環境を真摯に受け止めつつも、衛生面の徹底と魅力的な情報発信を丁寧に行っていくことが肝要であろう。

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