地域活性化のポイントとシニア層の登用

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2020年04月23日

  • 大村 岳雄

地域活性化という言葉を聞いて久しいが、果たして地方は元気になっているのであろうか。インバウンド需要の拡大で観光を中心に潤っている地域は増えてきているが、日本全体としては少子高齢化、人口減少に悩む地域がまだまだ多いのが実情であろう。

地域活性化を成功させるためには、どのようなポイントがあるのだろうか。地域活性化の成功事例は、折に触れセミナーや官公庁の事例集などで紹介されることがあるが、そこに決まった型やビジネスモデルがあるとは筆者は考えていない。

A市で成功した観光客誘致のモデルを、B市に移入して観光客は増えるのか。C県で導入した産業の優遇策をD県で導入したら、その産業がD県で芽吹いて定着するのか。

答えは分からない。というのも、前者の場合、仮に観光客を誘致できたとしても、ある一定量を超えた観光客を受け入れるだけの動線(交通網)や宿泊施設、観光施設が確保されているのか、また、リピーターを受容できるような準備ができているのか。後者の場合は、優遇策により当該産業の大手メーカーが進出し工場を建設すれば、雇用は一定程度確保される。しかし、その大手メーカーが生産する製品に対する需要が5年、10年と続くのか。

いずれのケースにおいても、地域の特性を考慮することや長期的な視野が求められる。

〇地域における理解と協働

さらに加えるとすれば、「地域における理解と協働」が必要なのである。

筆者が地域活性化の事例として、取材をした3地域で4つの取組(「十日町市・津南町」、「広島県」、「鹿児島県(地方銀行と自治体)」)の共通項がこれである。この4つの取組の内容は異なるものの、これらに共通するのは、「冷静な地域認識」、「外部者視線による戦略」、「外部からのリーダーシップと内部人材の重要性」、「議会・住民の理解と協働」であった。地域活性化のプロジェクトを組成する上では、地域の風土や資源を見つめなおし、外部者の視線やリーダーシップは活用しつつも、それを持続可能なものにしてすべく地域人材を育成していくことが大事である。そして、どのようなプロジェクトにおいても地域の予算は必要であり、そのためには議会の承認と地域住民の理解が必要である。

一例を紹介すれば、農地や廃校を活用した芸術祭(「大地の芸術祭」)を起点とした地域活性化を指向している十日町市・津南町のケースでは、第1回(2000年)の参加者数16万人から直近第7回(2018年)には55万人近くと3倍を超える規模に達している。広島県主導で設置された地域投資ファンドのケースでは、1号ファンドで40.5億円、2号ファンドで65.2億円の資金を集め、地域の中小企業やベンチャー企業に対し事業承継や成長の視点から投資を行っている。

〇地域のシニア層の登用

地域活性化の現場をみるべく、前述の十日町市・津南町で開催された第7回大地の芸術祭に参加した。そこで見たのは地域の方々、特にシニア層の活躍である。農地に展示された芸術品や地域の産品を紹介する初老の紳士、廃校の理科室を改造した劇場型食堂では郷土料理と地域史や音楽を説明するご婦人、実に生き生きとしていた。

人生100年時代と言われ、今のシニア層はまだまだ元気である。たまに参加するマラソン大会では、レース後半には白髪のシニアランナーに追い抜かれてしまう。SNSを活用した学生時代の同窓会やクラブのOB/OG会活動は、60代以上でも盛んである。このような、アクティブシニア層は、働き手としても顧客としても期待できる存在である。そして、このシニア層には、豊富な経験と知識、そして広範な人的ネットワークも存在する。

地域活性化には、勝利の方程式はない。しかし、アクティブシニア層を含めた地域人材に活躍の場はまだまだ残されていると感じる。

地域における理解と協働、それを支えるアクティブシニア層の登用をキーとした今後の地域活性化の動きに期待したい。

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