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自己隔離時に助け合いの精神

2020年04月03日

シニアエコノミスト 菅野 沙織

最近、新型コロナウイルス感染関連のニュースがトップで扱われる日々が続いている。イギリスでは3月22日の日曜日が母の日であったため、ジョンソン英首相と同氏の最愛の母親との写真が新聞などに掲載された。その写真には、「今年の母の日の最高のプレゼントはお母さんの家に行かないことだ」というキャプションがついていた。世界保健機関によれば3月26日現在、全世界の感染者数は今や46万人にのぼり、2万人以上が亡くなっている。イギリスでは学校が休校となったほか、パブやレストラン、ジム等、社交場の役割を果たしていた施設の営業が一時停止となっている。

しかし、欧州では、イギリスよりもイタリアやスペインの状況の方が深刻である。イタリアは先進国で、G7のメンバーでもあり、これまで医療制度の質が疑問視されたことがなかった。ただ、人口は中国の方がイタリアより遥かに多いにもかかわらず死亡者数では中国を上回っているほか、イタリアの新型コロナウイルス感染の拡大状況を見ればイタリア政府が感染を制御できていないことがみて取れ、このことが世界中の人々を不安にさせている。

しかし、このように不安感が増す中で、希望の光ともいえるニュースも入っている。その一つは、ロシア政府がイタリア政府に対して、物資や医療機器、専門家等を派遣する形で援助を行うことを申し出、イタリア政府がそれを受け入れたとする報道である。このロシアからの援助は3月22日から開始されているが、具体的には、ロシア国防省に所属する軍用機でロシア軍のウイルス専門家ならびに軍事医療関係者の八つのチームの派遣と、交通機関および屋外で使用する消毒液や必要な医療機器が運ばれてくるのである。なぜロシアはイタリアに積極的に手を差し延べたのだろうか。イタリア国民がこのような苦しい状況に追い込まれていることに、ロシア人は見て見ぬふりができなかった。なぜなら、イタリアはロシア人にとって大好きな国だからである。

外国の情報があまりなかったソ連時代を思い起こすと、一般人にとって西側の音楽の象徴は、ビートルズやローリング・ストーンズよりもむしろイタリアのポップ歌手アドリアーノ・チェレンターノであった。1970~80年代に一般家庭で人々をテレビ画面に釘づけにしたのは、ほかでもなくサンレモ音楽祭であった。人口僅か5万人のモナコから約30キロ離れた地中海に面したこのサンレモというイタリアの町を知らないロシア人はいない。何年か前に私も家族とこの町を訪れた。予想通り、レストランではロシア人を多数見かけ、町の中心にはロシア人向けの不動産仲介店が何軒も並んでいた。

新型コロナウイルス感染関連のニュースに話を戻すと、現在ロシア国内の感染者数は他国と比べて少ない(世界保健機関:3月26日現在 感染者840人、死亡者2人)ため、ロシアには他国を積極的に支援する余裕があるともいえる。この報道は、個人が自己隔離し国が国境を閉鎖する中で、互いを助け合う精神が常にも増して重要であることを示すものであると信じたい。

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