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MaaSへの期待と限界

2020年01月14日

中里 幸聖

毎年、年末の大納会(証券取引所の年内最終取引日)の日の朝の通勤電車は空いている。世間の多くの会社は12月28日に仕事納め、官公庁は御用納めである。しかし、証券取引所は12月30日まで開いており、証券会社及び関連会社は営業日で通常通りの出勤である。もちろん、他の金融業や小売業、外食業なども年末ぎりぎりまで営業している。

通常の平日は、首都圏の朝の通勤電車は辟易するほどの激混みである。筆者が利用している上野東京ラインは、自宅最寄り駅では座れはしないが、網棚に荷物を置けるところに立つのは何とか可能である。浦和駅辺りではそれも怪しくなり、赤羽駅からはぎゅうぎゅうになることもある。ところが、特に昨年の大納会の日は東京駅まで座席が埋まることはなかった。曜日の並びの関係と働き方改革の影響もあり、勤務先が30日に営業日でも休みを取った人が多かったのであろう。そのためか、東京駅構内では新幹線はほぼ満席である旨の構内アナウンスが流れていた。

首都圏などの大都市以外では、電車の乗客が少なく、運行本数を減らしたり、廃線になったりしている地域もある。独立採算では成り立たないような公共交通が廃止されると、その地域に住み続けるのが不便になり、ますます人口が流出してしまう悪循環が生じている。

こうした公共交通の状況を改善する手段の一つとして、近年、MaaS(Mobility as a Service)が注目されている。日本ではトヨタ自動車などが積極的に取り組んでいるので、自動車関連の話題と捉えている人も多いかもしれないが、世界的には電車、LRT、バスなどの交通全般に関わるサービスの話であり、その中に自動運転技術なども関わってくる。

MaaSは、「ICT を活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)を1つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ新たな『移動』の概念」(露木伸宏「MaaS (モビリティ・アズ・ア・サービス)について」(国土交通政策研究所報第69 号2018年夏季)より)である。混雑ルートの需要分散やOn-Demand交通(要求に応じた乗合タクシーやバスの配車など)への活用などが期待されている。

スウェーデンの研究者によると、MaaSの進展は4段階に分類される。レベル1は「情報の統合(複数モードの交通提案、価格情報)」、レベル2は「予約、決済の統合(1トリップの検索、予約、支払)」、レベル3は「サービス提供の統合(公共交通に加えてレンタカー等も統合)」、レベル4は「政策の統合(データ分析による政策)」とのことで(露木伸宏、前同論文より)、日本はレベル1かレベル2といったところであろう。レベル3は出発地と目的地が同じならどの事業者のどのルートを使っても同一料金とする、レベル4では需給データに基づいた料金設定や能力増強投資促進などが考えられる。北欧諸国などでは効果が見込まれており、日本でも並行路線などが存在する京阪神地域や京浜地域・山手線圏内などでは効果が期待できる。上野東京ラインに対する通勤需要も首都圏部分ではもう少し分散できるかもしれない。

ただし、MaaSが実現できるのは、官民は問わないが、当該地域に交通事業者が存在することが前提である。また、当該地域の交通需要に対する供給能力に一定程度の余力があることも必要であろう。そう考えると、現在の首都圏や過疎地域の交通問題を解決するには技術的な展開だけでは限界がある。

わが国が抱える様々な公共交通の課題を根本的に解決するためには、やはり国土構造-都市構造の再構築が必要と考える。1980年代後半~90年代前半に頻繁に議論された首都機能移転、道州制導入、多極分散型国土などについて、現在の状況を踏まえつつ、今一度光を当ててみてもよいのではないだろうか。2020年の初めに国家百年の計に思いを巡らせたい。

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