家庭の「プラ」ごみ再生割合は高いのか

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2019年12月26日

  • 経済調査部 市川 拓也

プラスチックごみへの世間の見方は、昨今では日ごとに厳しくなっているように感じられる。日常生活において、しばしばプラスチックを廃棄する機会があるのは、食べ物や商品の容器や包装として使われているプラスチックを捨てるときであろう。「プラスチックリサイクルの基礎知識2019」(一般社団法人プラスチック循環利用協会)によると、プラスチックごみのうちPETボトルなどを除く「その他のプラスチック製容器包装」の比率は全体の64%を占めるという(出典元:環境省「容器包装廃棄物の使用・排出実態調査」(平成30年度))。現在、家庭ごみとしてのプラスチック容器包装は「PET」や「プラ」のマークによって分別することになっている。環境問題を考えれば理解できるが、手間がかかるのも事実である。

PETボトルが衣服の繊維素材として再生されていることは広く知られている。その一方で「プラ」ごみについてはどうであろうか。公益財団法人日本容器包装リサイクル協会のウェブサイトによると、平成30年度に家庭から排出され市町村が収集するプラスチック製容器包装(PETボトルは含まない)が74.1万トン(出典元:環境省報道発表資料)であり、うち同協会が引き取り、材料(マテリアル)リサイクルの工程に向けられる分が37.1万トン、結果、再商品化製品利用製品になるのは18.3万トンである。市町村の独自処理や他のリサイクルに回る分があるものの、同協会を通じて材料として製品にまで再生される量は、市町村収集量の約25%である。手間の割に低いと感じる人もいるかもしれない。

家庭ごみの「プラ」マークが付けられている容器包装(その他プラ)については、「いろいろなものが混ざっているためマテリアルリサイクルには向きません」(プラスチック循環利用協会「プラスチックとリサイクル8つの『?(はてな)』」)とあり、材料として再生はそもそも向いていないそうである。材料リサイクルの製品化の割合が約25%というのは、その割には高いのかもしれない。

材料リサイクルでは再商品化製品利用製品にならない「残さ」(残りかす)が生じるが、前掲の日本容器包装リサイクル協会のウェブサイトで確認すると同年度に18.2万トンにものぼっている。再商品化製品利用製品とほぼ同量である。この残さは焼却エネルギー回収やRPF化(固形燃料化)など、資源として有効利用が図られているため、決して無駄ではない。しかし、家庭で手間をかけて分別した「プラ」ごみである。もっともっと、材料として蘇らせてほしいと思うのは高望みなのであろうか。

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