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高騰する小豆価格と和菓子店の苦境

2019年11月18日

経済調査部 エコノミスト 山口 茜

2019年も残るところ1ヶ月半を切った。お正月をどのように過ごすのか、計画を立て始めている人も多いかもしれない。

お正月といえばお雑煮だ。お雑煮ほど各人で思い浮かべるものが違う料理はないのではないか。ちなみに筆者の地元の島根県では、「小豆雑煮」といってぜんざいのような甘いお雑煮を食べる習慣がある。そのため、筆者にとってお正月と小豆は切っても切り離せないものである。また、お正月は和菓子を食べる機会もいつもより多いように思う。お正月には干支や勅題(歌会始の題)にちなんだ和菓子が各店から発売されるので、毎年楽しみにしている。

そんな小豆が今、困難に直面している。国産小豆の9割を占める北海道産の価格が、近年の不作や作付面積の減少等を背景に高騰しているのだ。大阪堂島商品取引所によると、2017年に60kg当たり2万5,000円を下回っていた北海道産小豆の現物価格は、足下では同約4万円まで上昇している。和菓子になくてはならない小豆の価格高騰は、多くの和菓子店の収益を圧迫している。

主な対応策としては、国産よりも安価な外国産の使用量を増やすことや、原材料費の上昇分を販売価格に転嫁することが考えられるが、どちらも簡単な話ではない。原材料を見直すに当たっては、商品の風味やブランドへの影響、安定した仕入先の確保などについて慎重に検討しなければならないだろう。また、原材料費の上昇分を販売価格に転嫁することについても、消費者の理解が得られやすい環境にはない。

図表は和菓子の代表的な品目である、ようかんとまんじゅうの「小売物価」と「購入単価」の推移を示したものである。小売物価は同品質の商品の定価を継続して調査したものであり、購入単価は消費者が実際に購入した商品の平均価格である。図表のように購入単価が小売物価に比べて低下するのは、家計がより低品質で安いものを購入する時や、同じ品質のものでも特売価格で購入する時、あるいは1回当たりの購入金額を減らす時など、いずれも家計の低価格志向が強まる時である。他の食品を見ても、購入単価がこれほど小売物価を下回る品目はほとんどなく、和菓子に対する家計の低価格志向は特に強いことがうかがえる。

こうした状況を踏まえると、原材料の値上がり分全てを販売価格に転嫁することは難しいと判断する和菓子店は多いだろう。消費者は日常生活で小豆そのものを買う機会が少ないため、原材料費が高騰しているという実感が湧かないことも販売価格に転嫁しにくい要因として考えられる。

今、多くの和菓子店は苦境に立たされている。この苦境をなんとか乗り越えてほしいと和菓子ファンの一人として祈るばかりだ。ひとまず、季節の和菓子を食べて応援しようと思う。

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