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「対話」は一人ではできない

~スチュワードシップ・コード改訂の審議開始~

2019年10月17日

金融調査部 主任研究員 横山 淳

2019年10月2日、金融庁の「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」が開催され、スチュワードシップ・コード(SSコード)改訂に向けた審議がスタートした。来年6月の定時株主総会の準備に間に合うようなスケジュールでの改訂作業が予定されているようだ。今後、臨時国会に提出が見込まれている会社法改正法案と並んで、ガバナンスを巡る注目のイベントとなるだろう。

もっとも、会社法やコーポレートガバナンス・コード(CGコード)と比べると、SSコードに関して、どこか人ごとのように受け止めている上場会社が多いように感じられる。確かに、会社法が、上場会社を含む株式会社を直接規律する法律であるのに対して、SSコードの対象は、直接的には機関投資家である。しかし、SSコードは、CGコードと車の両輪として、上場会社と機関投資家との間の「建設的な対話」を進めるものである。「対話」の相手方に影響が生じれば、それは自分自身にも跳ね返ってくることになる。

例えば、今回のSSコード改訂の議論では、株主総会議案に対する賛否だけではなく、その理由を公表することや、上場会社との対話の内容やその結果などを含む、スチュワードシップ活動状況の公表が取り上げられる。これらは、一義的には、機関投資家の説明責任を強化するものではある。しかし、それは同時に、対話の相手方である上場会社が、その説明に真摯に向き合うように求められることをも意味している。

ESG要素も論点の一つとされている。この中で「ESG要素等を含むサステナビリティを巡る課題に関する対話を行う場合には、投資戦略と整合的で、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に結び付くものとなるよう意識すること」(※1)が機関投資家に期待されている。これと対話する上場会社の側でも、同様の意識を持つことが期待されよう。

企業年金を含むアセットオーナーのスチュワードシップ活動促進もテーマの一つである。昨年のCGコード改訂により、企業年金がスチュワードシップ活動などを適切に行うため、母体企業が行う人事面、運用面の取組みに関する開示(原則2-6)が新設されたことは記憶に新しい。これに対応する規定が、SSコードにおいても検討されるものと考えられる。企業年金が活用する年金運用コンサルタントに対する規律付けも、SSコードに設けることが議論される。

これらの取組みは、企業年金が、従業員の大切な老後資金を預かる機関投資家として適切に振る舞うこと、すなわち、たとえ母体企業の最重要取引先であっても、「ダメなものはダメ」と物言うことができるようになることを意図したものである。さらに「企業年金の運用資産に占める政策保有株式が過大となっている例がある」(※2)との指摘があったことを踏まえれば、いわゆる退職給付信託等のあり方にも議論が及ぶかもしれない。

その他、議決権行使助言会社に対する規律の強化、例えば、人的・組織的体制の整備、助言策定プロセスの具体的な公表、企業との積極的な意見交換なども審議される。これらは、機関投資家の行動に大きな影響力を持つ議決権行使助言会社に対して、いわば「襟を正す」ように求めるものといえるだろう。襟を正した議決権行使助言会社は、筋の通らない会社提案には、自信を持って反対推奨するであろうし、機関投資家のみならず、社会もそれを支持するであろう。

「対話」は一人ではできない。「建設的な対話を行う」(CGコード基本原則5)ことにコンプライする以上は、対話の相手の事情にも無関心ではいられないはずだ。

(※1)令和元年10月2日開催「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」資料3「スチュワードシップ・コードをめぐる状況と論点等について」p.20
(※2)平成31年4月24日「コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討の方向性」(「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(4))p.1

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金融調査部
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