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インバウンド:選ばれるクールジャパンへ

2019年10月02日

リサーチ本部 主席研究員 兼 社会連携担当 岡野 武志

内閣総理大臣を本部長とする政府の知的財産戦略本部は、今年9月に新たな「クールジャパン戦略」を決定した。クールジャパン(CJ)は、「世界から『クール(かっこいい)』と捉えられる(その可能性のあるものを含む)日本の『魅力』」を指す。新たな戦略は、CJの狙いを「日本製品の輸出額や訪日外国人旅行者数の増加自体ではなく、日本に共感し愛情を抱く日本ファンを国内外において増加させること」に定め、国全体でCJ の狙いを共有して、戦略的に日本ファンを増やしていくことを目指している(図表1)(※1)。

新たな戦略の展開に向け、これまでの「クールジャパン関係府省連絡・連携会議」は廃止され、関係省庁の連携体制を強化するために、CJ戦略担当大臣と関係省庁の副大臣による「CJ戦略会議(仮称)」が設置される。また、CJに関わる関係者を広く包含する緩やかなネットワークを構築するとともに、そのネットワークを有効に機能させるための「中核的な機能を担う組織」を置くことも構想されている(図表2)。民間主導となるこの中核組織には、データや知見の収集・分析と共有、提携の支援や事業展開への助言などが期待されている。

政府はこれまでにも、ビザ要件の緩和や消費税免税対応などの施策を進め、訪日旅行者数は年間3千万人を超える水準に達してきた。観光庁の「訪日外国人消費動向調査(※2)」をもとに、来訪回数別の訪日旅行者数を概算してみると、18年には2千万人近い再訪者があり、10回を超えるリピーターも増加していることが分かる(図表3)。しかし、訪日旅行者数の伸びを前年比の増加率でみると、2015年のピーク(47.1%)から18年は8.7%に低下しており、訪日旅行の消費額にも伸び悩みがみられている。

日本を訪れる外国人旅行者は、「観光・レジャー」を主な来訪目的とすることが多く、この比率は12年の49.0%から、18年には78.2%まで上昇している。また、滞在日数別の訪日旅行者数を概算してみると、13日間までの旅行者数が大きく増加しているのに対し、長期滞在者の数は限られている(図表4)。観光インフラへの過少投資や過剰投資、オーバーツーリズムなども懸念される中、CJを新たな段階に進めるためには、さまざまな目的を持って長く滞在してくれる日本ファンを増やしていくことが求められるであろう。

在宅勤務やワーケーションなどが広がると、仕事と居場所の関係は緩やかになり、人々は国の内外を問わず、好きな場所を選んで暮らせるようになる可能性もある。環境や安全・安心、保健、医療、教育、文化、スポーツなどを含め、多くの外国人が魅力を感じる場所は、日本人にとっても住んでみたい場所になるように思える。CJの取組が、短期的な経済効果だけでなく、選ばれる国や地域づくりにつながっていくことを期待したい。

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