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スポーツビジネスと地方創生

2019年09月09日

経済調査部 エコノミスト 鈴木 雄大郎

8月下旬、北海道日本ハムファイターズが球団職員の中途採用の募集を開始した。募集要項を見ると、2023年に開業予定の新球場・ボールパークに関する業務に携わる人材の採用である。新球場は北海道北広島市に建設予定であり、職員募集にあたっては家族の理解を得て円満に転職するためのサポートツールなどを用意しており、こうしたことも話題となっている。

スポーツビジネスは成長産業の一つであり、様々な企業が注力している。日本生産性本部の『レジャー白書』によると、スポーツ観戦料は2011年以降増加傾向にあり、2018年には1,640億円となった(図表)。

政府もスポーツ産業について、「日本再興戦略2016」で官民戦略プロジェクトの一つに、さらには、「未来投資戦略2017」では2025年までに新たに全国20ヶ所にスタジアム・アリーナを実現させることをKPIとして掲げている。また、スポーツ庁と経済産業省は「スポーツ未来開拓会議」を立ち上げ、2012年に約5.5兆円であったスポーツ市場を2025年までに15.2兆円に拡大することを目指し、その柱の一つとして、「スタジアム・アリーナ改革」を打ち出している。

この改革では、スポーツ産業のインフラとなるスタジアム・アリーナを整備し、スポーツ産業を発展させるとともに、こうした施設が地域のシンボルとなり、周辺施設への経済波及効果を創出し、地域の持続的成長を目指している。そして、これまで地域にとって、コストセンターとなっていた施設をプロフィットセンターへ転換することを図っている。また、整備に係る資金調達手法や民間資金活用についても検討している。

こうした流れを受け、全国各地のスタジアム・アリーナでは施設の改修や周辺施設の充実化が図られている。ただし、その多くは既存の施設を改修するものが大半だ。これに対し、ファイターズが進めているボールパーク構想は、新球場の開設やそこでの業務に関わる人材の採用などを含め、ゼロから作り上げるプロジェクトであり、その地に大きな経済効果を生み出す可能性を秘めている。

スタジアム周辺にホテルや商業施設などが新設されれば、雇用を生み出し、域外からの観光客や施設利用者の増加に伴い、その地域は域外から“外貨”を獲得できるチャンスを得ることができる。こうした取り組みは地方創生にも大きな役割を果たすこととなろう。

ただし、こうしたスポーツ産業による地方創生は全国どこでもできるわけではない。域外から集客できるプロチームの数には限りがあり、交通アクセスの「利便性」などを確保しなければ、集客にはつながらず、プロチームの経営と共倒れしてしまう恐れもある。また、その施設の稼働率を上げるための工夫も必要になるだろう。特定の利用に限定した施設は稼働率の低下につながりやすく、不稼働日が多い場合、周辺施設への集客も低下してしまうことも考えられる。そうなると、安定した雇用の確保にもつながらず、持続的な成長にはつながらない。スポーツビジネスを地方創生につなげていく上では、こうした視点も忘れてはならない。

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