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寿司は軽減税率が適用?

2019年09月04日

ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 菅野 泰夫

久しぶりにギリシャを訪問する機会があった。2015年のギリシャ危機再燃より続く緊縮財政の真っ只中であり、あらゆるインフラが老朽化したまま放置されているかのようだった。高速道路を走っていても、センターラインを含む車線が至る所で消えており、正直、怖い。引き直す予算がないようだ。グローバル金融危機から10年以上経ち英国ではその記憶も薄れつつある今でも、ギリシャ国内の社会、経済は甚大な影響が残っている。

また特に興味をもったのは、買い物をしたときレシートで気づかされた軽減税率である。ギリシャでは日本の消費税に該当する付加価値税(VAT)の軽減税率が細かく設定されており、小さなお店でもレシートに分かりやすく表示されている。ギリシャ危機が再燃した際に、EUからの支援プログラムを受ける引き換えに、VATの標準税率は24%までに引き上げられた。軽減税率には6%と13%があるが、レシートに詳細に記載されているため、後からでもチェックできるし、個々の商品にどれだけ税金を払っているのか明確に分かる。ギリシャの物価は英国より相当安いが、子供服などは標準税率の24%が適用されるため、むしろギリシャの方が高いぐらいである。苦しい財政状況を反映しコーヒーやたばこ、ビールといった嗜好品だけでなく多くの日用品に対しても標準税率が課されている。レシート上の税率表示は、次回以降、少しでも税金が安いものを探すのに役に立つ。

一方、英国のVATの標準税率は20%である。軽減税率はゼロ%と5%が導入されている。ただ英国のレシートの表記はお世辞にも分かりやすいとは言いがたい。英国では食料品の多くがゼロ%税率なので、多くの店では値札にも内訳表示がないため、正直あまりVATを意識することはない(子供服もゼロ%税率)。また英国ではチョコレートケーキはゼロ%税率である一方、板チョコは20%の標準税率であるなど不思議な点もある。アフタヌーンティーの文化からか、ケーキは日常的な食べ物と考えられるのだろうか。またテイクアウトも冷たいままのサンドウィッチであれば、ゼロ%税率であるが、温かいハンバーガーは20%など複雑である。

なお、最もVATの判断が難しいひとつと言われているのが、最近ロンドンでも大人気の寿司である。生魚は基本的にゼロ%税率であるため、寿司をテイクアウトすれば、VATは掛からない。ただこれは店によって判断が異なっており、シャリの部分が温かいという理由で20%課税するケースも多い。「温かい」の判断基準は常温以上であるため、ある程度シャリを冷まして出せばVATを払わなくてもいいと判断する店もあるなど、対応が異なっている(炙りトロサーモンなどはネタとして最も判断に苦しむはずだ)。

ちなみに日本でも10月から消費税率が10%に引き上げられることに伴い、8%の軽減税率が導入されるが、レストランのテイクアウトは、食べ物の温度によらず軽減税率が適用されるとのことだ。欧州ではVAT軽減税率導入は早くから行われており、ギリシャでは1987年から、英国では1995年(VAT自体は1973年)から始まり、調整と変更が繰り返されてきた。生活の中に軽減税率の影響は確実に表れてくるため、生活習慣の変化とともに日本でも浸透してくることと思われる。

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菅野 泰夫

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ロンドンリサーチセンター
シニアエコノミスト(LDN駐在) 菅野 泰夫