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英国:入れ物持参でないとランチが買えない?

2019年07月10日

シニアエコノミスト 菅野 沙織

バンク・オブ・イングランド(英中銀)をはじめ金融機関の事務所で埋め尽くされている英国の金融街「シティ」は、現在グリーン化に積極的に取り組んでいる。このことを強く意識させられるのは昼休みにランチを買いに出かける時である。たとえば、オフィスの近くにある英大手スーパーマーケット・チェーンのマークス・アンド・スペンサー(M&S)に行くとしよう。M&Sが1980年に発売したサンドイッチのランチ・パックは今も多くの人にとって定番のランチであり、サンドイッチの種類は少なくとも20以上と、顧客のどのような好みにでも対応できるが、近年はサラダやアジア風のお弁当も人気を集めている。サンドイッチ以外であればフォークやナイフが必要となるため、これまでは使い捨てのプラスチック製のものがランチ・パックの並んでいる棚の隅に無造作に置かれていた。

しかし、18年にプラスチック・フリーを宣言したシティでは、M&Sが木製の使い捨てスプーンやフォークに切り替えた。もっとも、これが使いづらいとして、家からステンレス製のものを持参する人が増えているという。同じく英大手スーパーマーケット・チェーンのウェイトローズはビニール製の袋の使用をやめ、マイ・カップを持参しなければコーヒーも買えないようになった。実は私も金属製のスプーンやフォーク、コーヒーカップを入れたオフィス用のショルダーバッグの重さで、シティのグリーン化がかなり進んでいることを実感している次第である。

だが、これは序章にすぎない。ロンドンの目抜き通りの一つであるオックスフォード通りにある大手デパート、ジョン・ルイスの地下に入っているウェイトローズは先月、自前の容器を持参する顧客にはパスタやライス、青果類を通常より安い値段で販売することを実験的に実施した。英国放送協会(British Broadcasting Corporation、BBC)の報道によれば、特に若い客層がこの「実験」を前向きに受け止めて、今後もグリーン化に協力する姿勢を見せた。

これからは自前のコーヒーカップや買い物袋に加え、ランチボックスのような容器も持参しなければ買い物ができないことにもなりかねず、このような状況への心の準備も必要であろう。

6月に英国政府は、2050年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で80%削減するとした「2008年気候変動法」を一部改正し、法的拘束力を持つ温室効果ガスの排出量削減目標を80%から100%に引き上げる法案を議会に提出した。世界で最も厳格な目標であり、これに成功すれば30年後には温暖化や他の気候変動への影響がゼロになるとされる。このような高い目標設定は、同国の技術発展を促す可能性がある。そう考えると、買い物の不便さぐらいは高い志で乗り越えられそうな気がする。

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