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国際機関で働く日本人を増やすには

2019年06月21日

藤原 正彦

通常国会が終盤に入ったが、毎年通常国会冒頭で行われる政府4演説の1つに外交演説がある。今年1月28日の外交演説は河野外務大臣にとって2度目の演説であったが、「国際機関で働く日本人を増やす」ための取り組みに初めて言及していた。

国際機関の職員採用は基本的に公募で行われ、採用基準は「能力本位」である。ポストに見合った能力を持っていなければ、分担金を多く払っている国の出身といえども採用してもらえない。こうした制度の下で、国際機関の運営に必要な資金の分担において日本の存在が大きいのに対して国際機関の事務局における日本人の存在感が薄いことは事実である。日本人が増えることで組織内に多様な意見や議論が生まれることは国際機関にとっても有益なことなので、「日本人を増やすべき」という考えは妥当であり、決して日本の「エゴ」ではない。

では、どうすれば国際機関に採用される日本人を増やせるのか。大前提は英語でコミュニケーションができる人材を増やすことである。英語ができないことには書類審査、面接といった選考プロセスの中で残っていけない。日本の英語教育の現状を見る限り、国際機関に採用される日本人を増やすには、海外留学経験者にもっと国際機関に応募してもらうことが大事である。

その際、現在留学している学生が応募するのも結構であるが、多くの国際機関の職員公募では、募集するポストの業務に関連する分野の実務経験を有する応募者が優遇される。したがって、企業で働いている30代の留学経験者が国際機関に応募することが有益である。企業の人事担当者から見ると「国際機関での経験が社業の役に立つのか。グローバルな人材を育てるなら海外子会社に派遣すれば十分だ」と思われるかもしれない。しかし、国際機関に3年間勤務し、日本人職員のメンター役も務めた筆者の経験を振り返ると、「親会社からの派遣」のような「後ろ盾」を持たずに、様々な出身国の人々と机を並べて働く経験を積んだ人は、「多様性」を実感し、その中で生きていく術を体得する。このような人材は、国際機関での仕事が社業に直結していなくとも、社内で貴重な存在になると思う。

国際機関の公募には1つのポストに対して世界中から何十人、時には100人以上が応募してくる。海外の人は不合格の経験を積みながら、やがてポストを得ていく。日本人が1回で合格するのは非常に困難だ。国際機関に応募するためにまず今の職場を辞めなければならないのなら、誰も応募しない。「落ちてもともと」という気持ちで、社員が応募するのを奨励し、勤務を終えたら温かく迎え入れてくれる企業が増えることを期待したい。

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