女性活躍の状況とさらなる進展に向けて

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2019年06月12日

  • 伊藤 正晴

少子高齢化による労働力人口の減少懸念への対応や、多様な人材の登用によるイノベーションの促進などへの期待から、産官学のさまざまな分野で女性の活躍が推進されている。東洋経済新報社の「CSRデータベース」からデータが入手できた上場企業を対象に、管理職の女性比率を算出すると、2017年度で7.4%であった。2011年度は4.1%であり、企業における女性の登用が進展していることがわかるが、まだまだ非常に低い水準にとどまっていると言わざるを得まい。

33業種別で見ると金融関連で管理職の女性比率が高い。2017年度で最も女性比率が高い保険業は17.6%となっており、銀行業は15.9%、証券・商品先物取引業は14.7%であった。また、サービス業と小売業もそれぞれ16.9%と14.0%となっている。一方、製造業は全体的に女性比率が低く、輸送用機器が2.1%、機械が2.9%、電気機器が3.0%となっている。また、建設業も2.3%と低い。あらゆる業種で女性の登用をさらに進める必要があるが、特に製造業や建設業で女性の登用を進めることを要しよう。

業種によって管理職の女性比率が大きく異なっている要因の1つに、大学での学生の状況があろう。文部科学省の「学校基本調査」によると、大学の学部における女子学生の比率は直近の2018年度で45.1%となっている。20年前の1998年度は35.6%であったが、毎年、女子学生の比率が高まっており、直近では学生全体の半数弱が女子である。ただ、理系分野(理学、工学、農学、医学、歯学、薬学)に限ると、女子学生比率は1998年度に18.9%だったのが2018年度は26.8%へと高まった程度で、女子学生は学生全体の1/4強にとどまっている。

理系分野を詳細に見ると、薬学は女子学生の比率が59.5%、農学が45.0%、歯学が42.1%で、学生の半数前後が女子となっている。しかし、工学は15.0%、理学は27.8%、医学は33.3%で、特に学生数の多い工学部の女子学生の比率が非常に低い。企業などで活躍する人材のプールとなる大学での状況が、企業における業種別での管理職の女性比率の違いに影響している可能性がうかがえよう。

女子中高生の興味・関心を高めて理系分野へ進むことを支援するため、内閣府男女共同参画局では「理工チャレンジ(リコチャレ)」、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)では「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」などの施策が実施されている。このような取り組みの効果もあって、理系分野に進学する女子学生は増えている。前述のように、工学の2018年度の女子学生比率は15.0%と低いが、それでも1998年度の9.4%に比べると約1.5倍の水準にまで上昇しているのである。

もちろん、興味や適性は個々人で異なり、さまざまな分野で男女の比率が同程度となることが望ましいとは言えない。しかし、理系分野、特に工学や理学での女子学生の比率は上昇傾向が見えるもののまだまだ低いのではないか。産官学における取り組みをさらに進め、個々人の能力が最大限に発揮できる社会の構築が望まれる。

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