1. トップ
  2. レポート・コラム
  3. コラム
  4. テレワークを“とりあえず”始めてみませんか?

テレワークを“とりあえず”始めてみませんか?

2019年03月04日

経済調査部 研究員 矢澤 朋子

「テレワーク」が再び注目されている。

テレワークとは、「ICT(情報通信技術)を活用した時間と場所を限定されない働き方」のことで、Wi-Fiを利用してオフィス以外の場所で業務をしたり、外出時の移動や待機の時間などにスマートフォンやタブレットPCで業務を行ったりするのである。

16年9月に安倍首相が「働き方改革」を提唱し、テレワークは多様な働き方を推進する施策の一つとして世に知られることとなったが、昨今ではテレワーク活用の裾野が広がっている。例えば、テレワークと障碍者の就業は相性が良く、(特に通勤が困難な)障碍者雇用の推進に繋がる。また、配偶者の転勤への帯同による退職や離職の阻止に加え、兼業・副業による地方での就業(地域活性化)の可能性も挙げられる。さらに、災害時に事業を継続させる手段としても期待されている。しかし、企業におけるテレワークの導入状況は17年で13.9%(※1)にとどまる。

テレワークの導入には、様々なコストがかかる。Wi-Fi利用時のセキュリティ対策、テレワーク用の端末購入、サテライトオフィス整備などのハード面に加え、労務管理、人事評価制度の見直し、社内制度作りなどのソフト面が挙げられる。さらに、社員間の不公平感(テレワークに適さない業務もある)や「テレワークを利用しづらい雰囲気」などを払拭する必要もある。

このようなコストを理由に、企業はテレワークの導入を見送る、またはテレワークを利用できる社員を限定する傾向が見られる(テレワーク導入企業のうち51.4%は、テレワークを利用する従業員の割合が「5%未満」(※2))。これでは上司や利用していない社員からの理解が深まりづらく、「(育児、介護、疾病治療など)特別な事由がある社員のための特別な制度」の域を出ない。テレワークの効果を最大化するには、対象を全社員へ広げる必要があろう。

昨年テレワーク導入の恩恵を受けている先行企業の実体験を聞く機会があったが、共通点があることに気付いた。どの企業もテレワーク導入当初の対象は小規模であったが、全社員へ拡大すべく、導入後は社員がテレワークを利用しやすいよう制度の柔軟化に努めている。具体的には、利用に際し理由は問わない、利用回数の制限を撤廃する、突発的な利用に対応できるようPC機器を増設する、サテライトオフィスを設置/増設する、自宅縛りを撤廃するなど、対象者の拡大と並行して、利用者からの意見を反映させた施策を次々と講じたのである。社内や労働組合からの困惑の声や反発もあったが、その中で徹底して制度の柔軟化を推進できたのは、生産性の向上及び社員の生活の質向上という明確な導入目的、そしてその目的を達成するというトップの強い意志があり、それらを全社員へ周知徹底していたためであろう。

上述した通り、テレワーク導入には多種多様なコストがかかる。だが、先行導入企業の言葉を借りて言うならば、「まず、やってみる」、「小さく産んで、大きく育てる」という意識で、“とりあえず”テレワークを始めてみてはどうだろうか。

(※2)17年実績値。出所は(※1)に同じ。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
執筆者紹介
経済調査部
研究員 矢澤 朋子