企業・統計不正の防止の鍵は「KY」?
2019年02月26日
昨今、企業不正と統計不正のニュースが相次いでおり、その一部は、大きな社会問題・政治問題へと発展している。これまで日本は、世界から真面目で勤勉な国だと考えられてきたが、まるで「不正の国ニッポン」と呼ばれてもおかしくないありさまだ。
これまで筆者は、長らく、個人投資家および統計ユーザーという立場にいるため、これらの不正問題は決して他人事でない。そこで今回は、この2つの不正問題の根底に潜んでいるのは何であり、どのような解決策があるのか考えてみたい。
一見すると、2つの不正問題は全く関係がなさそうだが、各種報道内容から共通して浮かび上がってくるのは、周りの空気を読むことが重視され、臭いものに蓋をするという職場の風土である。具体的には、職場で不適切な対応が行われていることに気付いたとしても、空気を読んで、その問題を指摘・追及することはせず、結果として問題が発覚したときの影響が大きくなっている。
過去に複数の職場で仕事をしてきた経験を踏まえると、同じ職場内で空気を読むこと自体は決して悪いことでなく、むしろ業務の効率化につながっている面もあると考える。しかし、それが不適切な対応を見逃すことにつながってしまうのであれば話は別だ。
現在、統計不正をきっかけに、国の統計作成体制に関して、複数の省庁で統計を作成する現行の「分散型」から、特定の省庁を中心に統計を作成する「集中型」へと抜本的に改革すべきという議論がある。また、統計作成部署の職員の短期的なジョブ・ローテーションを見直すべきとの指摘も見られる。
しかし、組織の「箱」や人の「異動」を変えても、同じ職場内で空気を読むという風土がひとたび生まれてしまえば、不正問題が再発するリスクは低くならない。それでは、こうした問題を防ぐには、どうすればよいのだろうか。
2つの不正問題に見られる構図を踏まえると、具体的な解決策を見つけるのは難しくない。例えば、職場の空気を読めない、もしくは読む必要のない第三者機関が定期的にチェックするという体制作りが有効な対策になると考えられる。これは、一般的な不正防止策の基本でもある。
すなわち、今では、ほぼ死語になっている「KY(空気を読めない)」という視点こそが、不正防止の重要な鍵を握っていると言えよう。そして筆者は、これにより不正問題が今後減少していくことに期待している。
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