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ロシア人が一番心配しているのは物価の上昇

2019年01月09日

シニアエコノミスト 菅野 沙織

2018年のロシア経済を振り返ると、前半はインフレ率(2%台)が記録的低水準となった時期として、後半は原油価格の下落、ルーブル相場の大幅変動、米国による新制裁の可能性といったリスクファクターの顕在化がインフレ加速への懸念を拡大させた時期としてロシア人の記憶に刻まれたといえる。

18年10月にロシア国内で実施された世論調査では、インフレ加速を今年最大の懸念事項に挙げた回答者は全体の72%を占め、一年前の56%と比べて大幅に増加した。インフレ懸念に次いで多かった回答は貧困問題(18年が62%、17年が同66%)であった。こうした中でロシア中銀は国民の懸念に応えるように、12月14日に開いた18年最後の金融政策決定会合で政策金利を25bps引き上げ7.75%とした。

同中銀は18年9月に14年12月以降初となる利上げを実施しており(利上げ幅は25bps)、今回はそれに続く二回目の利上げである。今回の利上げ決定の背景には、原油価格下落に伴うルーブル安を原因とした国内のインフレ上昇基調や、米国による追加制裁の可能性があることに加え、同中銀が8月に停止したルーブル売り・ドル買いを19年1月15日に再開すると発表したことがある。ロシア中銀は8月にルーブル相場のボラティリティが上昇したことを受けて、財政ルール(ウラル産原油価格が1バレル当たり40ドルを超えた場合には、価格上昇分で外貨を購入し外貨準備を積み増すことを定める)に基づく外貨購入を停止したが、11月にナビウリナ総裁はルーブル相場が比較的安定したため年明けに同ルールに基づく外貨購入を再開する、とコメントしている。こうしたルーブル売り・外貨買いはルーブル相場に下押し圧力をかけることが予想されるため、同中銀はこの圧力を軽減させる目的で今回の利上げに踏み切ったと見られている。

国内ではインフレ率が上昇している。11月のインフレ率は前年比3.8%であったが、12月に同4.2%まで上昇し、ロシア中銀のインフレターゲット(4%)を上回った。19年1月1日から実施された付加価値税の引き上げ(18%から20%へ)の影響で同年にインフレが加速し、同5.0%~5.5%まで上昇する可能性があると同中銀は予想している。さらに、原油価格(ブレント原油)は石油輸出国機構(OPEC)の加盟国と非加盟国の減産合意にもかかわらず大幅な上昇が見られないどころか、60ドルを下回って推移しており、ロシア中銀はこれがルーブル安をもたらすことを通じてインフレ率が上振れすることを懸念している。

こうした状況下での去年12月の利上げは、今後状況がインフレ高騰の場合に大幅利上げを余儀なくされることを防ぐための「先制的な措置」とも考えられているが、中銀の利上げだけでインフレ加速を防げるかどうかには疑問が残っている。

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