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インフレ率が2%に達した時の感覚を想像する

2018年11月14日

政策調査部 主任研究員 土屋 貴裕

日本のインフレ率は、原油価格高騰や消費税率引き上げなどの要因を除くと、日本銀行が掲げる2%の目標に届いていない。インフレ率が2%超であった時期ははるか昔となり、日本に暮らす多くの人は、物価上昇率も金利もゼロ近傍が当たり前になりつつある。だが、2%に届かないまでも、インフレ関連指標はマイナスではなく、「デフレ」とは言いにくくなってきた。そこで、近く訪れるかもしれないインフレ率が2%の世界を想像してみた。

インフレ率がゼロ近傍の場合、「名目値」とインフレ率を差し引いた「実質値」の差は小さいが、インフレ率が上昇するにつれて両者はかい離していく。すなわち、これまであまり気にしてこなかった実質金利、実質賃金などが重要になってくる。ちなみに価格据え置きで内容量を減らす「ステルス値上げ」も「実質」値上げだ。実質的な価値を見極める必要がある。

例えば、子供が生まれた時のお祝い金を子供名義の銀行預金にするという話がある。仮に大学進学資金として預金したとすると、毎年2%物価が上がることで、その預金の価値は18年で約3割下落する。2%のリターンを確保して、ようやく価値がトントンとなる。給料も同じく、定期昇給で毎年の名目額が増えても、ひょっとしたら先輩たちよりも実質額は少ないかもしれない。住宅ローンの金利が上昇するなどして、マスコミはインフレの問題を指摘し、日銀は批判にさらされるだろう。少し前までデフレ脱却が必要とされてきたにもかかわらず、である。

実質的な所得が減ると、物価が上昇した経験を持たない多くの人が、支出に対して保守的になるかもしれない。だが、身近な光熱費や交通費などが値上がりを続けると、インフレに負けない方策を考え始めるのではないだろうか。一つは、インフレに負けない実質リターンが得られそうな資産運用を考えることである。米国でIRA(個人退職勘定)などの退職貯蓄制度が普及したのは、インフレによる資産の目減り対策が理由の一つとされる。このほか、インフレに負けないように賃金が上昇する、例えばベア(ベースアップ)が可能でかつ実行される会社が就職先として好まれるだろう。

判然としない将来の実質値はどうなりそうか、インフレに負けないようにするためにはどうすればいいか、いろいろと考えなければならないのである。経済のダイナミズムが高まるとしても、ストレスも高まりそうだ。

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政策調査部
主任研究員 土屋 貴裕