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低下する構造的失業率

2018年09月13日

リサーチ業務部 リサーチ業務部長 小林 卓典

今年4-6月期の失業率は2.4%、失業者数は163万人(いずれも季節調整値)。過去に雇用情勢が最も悪化した2002年の失業率は5.4%、失業者数は359万人であった。90年代末から2000年代前半にかけて失業率は4%以上で推移し、この失業率の高さの原因として、労働の需要と供給のミスマッチによる構造的失業率の上昇が指摘されていた。

たとえば、2002年度の経済財政白書は、構造的失業率を4%程度と推計し、需要不足による失業よりも、構造的な要因に起因する失業が大きな問題であるとした。労働市場の流動化を促す環境整備と規制緩和によって、ミスマッチを解消する必要があるというのが当時の標準的な見方であった。

労働力調査に完全失業者の「仕事につけない理由」がある。これによると、2002年は「希望する種類・内容の仕事がない」が106万人で最も多く、これに「求人の年齢と自分の年齢とがあわない」が79万人で続き、これらをミスマッチによるものと見なせば、確かに構造的失業は多かった。他方、「条件にこだわらないが仕事がない」という明らかに需要不足による失業は37万人であった。

その後、リーマン・ショックにより労働市場は一時的に悪化したが、景気回復とともに回復し、今年4-6月期の「希望する種類・内容の仕事がない」失業者は47万人、2002年からは59万人の減少、「求人の年齢と自分の年齢とがあわない」失業者は19万人、同60万人の減少となっている。

あくまで結果論だが、このように労働市場が改善した最も大きな要因は、構造問題の解消よりも、景気回復で労働需要が増加したことである。失業をミスマッチによる構造的要因によるものと、需要不足要因によるものに二分することはもともと難しく、実際には両方の要因が交じり合っている。

となると景気回復が続く限り、労働需要は増え構造的失業率も低下するということになる。今年4月の日本銀行の「経済・物価情勢の展望」で示された構造的失業率は、2%台に下がっている。構造的失業率≒自然失業率であるなら物価上昇率はもっと高くなってもおかしくない。しかし、実際にそうならないのは、現実の失業率と構造的失業率の両方に、さらに低下する余地があるからだろう。

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