生産性向上、してみた
2018年06月20日
「働き方改革」・「生産性の向上」、国会会期末に向けて耳にしない日がない話題であるが、みなさんの職場でも進んでいるだろうか。筆者も個人レベルであるが、昨年度は意識して生産性向上に取り組んでみた。
筆者の職務は季節性があるため、繁忙期となる下期に取り組みを集中的に実施したところ、残業時間を大きく削減することができた。一昨年度から昨年度にかけて、良くも悪くも業界動向に大きな変化はなく、仕事量はキャリアを重ねた分、相応に増えただけにとどまったことや、比較対象とした一昨年度は現職に就いて初年度であったこともあり、思った以上の成果となった。
生産性向上の取り組みは今までのやり方からの脱却であり、今までのやり方を踏襲する以上のエネルギーが一時的には必要となる。取り組みを進めた成果が、日々の生活にどのような影響を与えることになるかは、大いに意識するところだ。筆者の場合は、残業時間(超過勤務時間)に応じて残業代(超過勤務手当)が支払われているためこれが減少し、残業時間が減少した分の余暇を得ることができた。
残業時間の減少に伴う残業代の減少は、生産性の向上を進めるにあたり程度の差こそあれ、働き手が直面する影響の一つであろう。働き方改革において、長時間労働の解消と生産性の向上は結びつけて考えられている。今まで通りの残業時間を維持しつつ、高い生産性を発揮するといった働き方はその趣旨にそぐわないため、生産性の向上により残業時間は減る傾向となる。残業代の補填を見込み、残業時間の削減に応じて直接的なインセンティブを与える施策の導入やベースアップも進むと期待されるが、全てを補填するまでには残業代の賃金に占める割合が高いほど、多くの時間が必要となろう。
その一方で、働き手が余暇で果たすべき役割は、今後ますます増えていくと考えられる。働き方改革に沿って副業や兼業が原則解禁となれば、多くの働き手が仕事人として新たな役割を担うことになる。人口減少や少子高齢化といった構造的な問題への対応においても、家庭人、地域人として期待される役割が増えることはあっても減ることはない。このように働き方改革によって増えるであろう余暇を、活かすことができる環境は否応なしに整いつつある。筆者も働き手の一人として、得た余暇はフラリーマン(※1)活動に勤しむのではなく、環境変化に適応するための自己研鑽に充てたいものであるが、はたして。
(※1)定時に退社して行き場もなくフラフラしているサラリーマン。社会心理学者の渋谷昌三氏が著書の中で使った造語。
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マネジメントコンサルティング部
主任コンサルタント 浜島 雄樹
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