好調持続が期待される環境ビジネスの業況

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2018年03月15日

  • 伊藤 正晴

2018年2月26日付で、環境省の「平成29年12月環境経済観測調査(環境短観)」が公表された。環境短観は、産業全体における環境ビジネスに対する認識や取組状況などを把握するため、環境省が民間企業を対象として2010年12月から実施している調査で、毎年6月と12月時点での調査が行われている。ビジネスの業況については、「良い」、「さほど良くない」、「悪い」の3つの選択肢があり、「良い」と回答した企業の比率と「悪い」と回答した企業の比率の差を業況DIとしている。

環境短観によると、環境ビジネスを実施している企業から見た自社の環境ビジネス全体の現在(2017年12月)の業況DIは21であった。また、半年先を見通した業況DIは22、10年先は21で、「環境ビジネスの業況は横ばいで好調さを維持する見通し」としている。さらに、環境ビジネスを実施していない企業の回答も含めると、環境ビジネスの業況DIは現在が25、半年先が26、10年先は42となっている。環境ビジネスを実施していない企業の方が環境ビジネスに対して明るい展望を持っており、環境ビジネスに対する一般の期待はかなり大きいのかもしれない。

企業動向を把握する調査として、広く知られているのが日本銀行「全国企業短期経済観測調査(短観)」である。特に、日銀短観の業況判断DIは短期的な経済状況を知る上で欠かせないものとなっている。日銀短観の2017年12月調査によると、全規模合計・全産業の業況判断DIは16であった。前述したように、同時点の環境ビジネスの業況DIは21であり、調査が異なるので厳密な比較はできないが、産業全体に比べると環境ビジネスの業況が好調であることがわかる。

環境短観では環境ビジネスを4つの分野に分けている。現在の業況DIは、「環境汚染防止」が13、「地球温暖化対策」が26、「廃棄物処理・資源有効利用」が18、「自然環境保全」が7となっている。すべての分野の業況DIがプラスで、中でも「地球温暖化対策」の業況DIの高さが目立つ。この「地球温暖化対策」の業況DIは、半年先が27、10年先も27となっており、現在の好調が今後も続くと判断されているようである。また、「環境汚染防止」についても、半年先が16、10年先が21であり、今後、さらに好調さが高まるとの見通しになっている。

2016年から2030年までの国際目標である国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」では、気候変動やその影響を軽減するための緊急対策、海洋や陸上の天然資源の持続可能な管理など、環境に関する目標が掲げられている。また、2016年11月には気候変動に関する国際的な枠組みであるパリ協定が発効した。持続可能な社会の構築に向けて、環境問題への対応が世界的な課題となっている。このような状況の下、環境短観の「環境汚染防止」の海外需給DI(需要超過と供給超過の差)は、現在が11、半年先も11であるのに対し、10年先では15へと高まっている。「地球温暖化対策」の海外需給DIは現在の12から半年先は18へと高まり、10年先も19で好調を維持する見通しである。「自然環境保全」については現在の7から、半年先は22、10年先は43へと大幅に上昇している。

公害対策などの経験や高い技術力を持つ日本の環境ビジネスにとって、それは国内市場だけではなく、海外における環境に関する課題への取り組みがますます大きな機会をもたらすと考えられる。環境ビジネスの成長が世界の持続可能性の向上に寄与するとともに、日本経済の成長につながることが期待される。

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