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米国次期大統領よ、君子であれ!

2016年12月05日

岡本 佳佑

11月17日、安倍首相が米次期大統領のドナルド・トランプ氏との初会談を行った。会談場所は、ニューヨークにあるトランプ・タワー内のトランプ氏宅。日米の親密度・信頼度の高さが表れた格好であり、安倍首相をはじめ政府関係者はひとまず安堵したのではないだろうか。

しかし、それも束の間。トランプ氏がその後、大統領就任日におけるTPPからの撤退を宣言したためだ。政府は会談の成功を強調するが、会談内容は明らかにされておらず、先行きの日米関係は濃い霧に包まれている。

金融市場で恐れられていたトランプ・ショックの影響は、大統領選の開票日、しかも東京市場のみで表れるにとどまった。足下の金融市場では、トランプ氏が掲げる所得税・法人税減税や大型インフラ投資など、短期的な好材料のみがクローズアップされ、楽観ムードが漂っている。

しかし、冒頭で示したように、トランプ政権発足による不透明感が払拭されたわけではない。「中長期的な視点に立つと、トランプ氏の政策にはリスクが山積している」点を忘れてはならないだろう。

とりわけ、筆者が日本経済に悪影響を及ぼすものと懸念しているのが、TPPやNAFTAといった通商政策の今後の行方だ。

TPPは、日本が安倍首相の下で2013年に参加を表明したメガFTAであり、成長戦略の柱の一つだ。米国を除く11ヶ国でTPPを発効させたとしても、米国の抜けた枠組みでは、日本の受けるプラスのインパクトは相当小さくなってしまう。トランプ氏はTPPからの撤退をすでに宣言しており、安倍政権は成長戦略の練り直しを迫られている。

また、「NAFTAの再交渉」というトランプ氏の主張も、日本にとって対岸の火事ではない。特に、NAFTAの恩恵を受けるべく、メキシコを生産拠点として米国に輸出をしてきた自動車産業への影響は計り知れないだろう。

世界のGDPの2割強を占める米国経済の動揺は、世界経済・日本経済に大きな影響を与えることになる。足下の日本経済は、個人消費や設備投資など内需の低迷が続いており、外需に下支えされている面が大きい。米国の政策変更で世界経済に異変が生じれば、外需の減速を通じて、日本経済はさらなる低い成長を強いられることになりかねない。

中国の故事によれば、立派な人物(君子)は、自分が間違っていることに気づけばそれを改めるはずだ。米国の次期大統領が君子であることを願うばかりである。

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