高校生の学園祭にて:ダイバーシティはここまで来たか。

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2016年10月05日

  • 河口 真理子

アベノミクスの「女性活躍推進」が功を奏してきたのか、もはやダイバーシティイコール「女性」という時代は終わりかけているようだ。その代わりに最近注目されるようになっているのが、LGBT、性的マイノリティへの配慮だ。

海外ではダイバーシティといえばLGBTが先に来るような風潮があるようで、たとえば同性婚は今世紀に入ってから欧州や北米南米の多くの国で合法化の動きが続いている。そういう意味では日本のダイバーシティの動きは世界的には周回遅れともいえよう。しかしそうした中で昨年渋谷区に続き世田谷区でも同性パートナーシップを認める制度ができるなど、徐々にLGBTは市民権を得はじめたようだ。企業でも人事研修でLGBTを取り上げたという話も最近聞くようになった。ただし、しかし、いまだに渋谷や世田谷が同性パートナーシップを認めた、ということ自体が大きなニュースになるなど、LGBTは自分の日常生活とはまだ距離がある話だと捉える人が大多数であろう。

しかし。この9月、息子の通う公立高校の学園祭ではこうした認識を覆すイベントに出会った。息子が、クラスの出し物のお芝居「不思議の国のアリス」が凄い人気だから見に来い、というので、何も考えずに教室に行ってみた。確かにガラガラの教室もある中、小学生の子どもから大人まで立ち見が出るほどの人気だった。その劇はアリス(と思しき女子)が誰かに告白している場面からスタート。そして告白相手がどう見ても女の子。「え?」「どうして?なんで????」と思いながら観ていると、次の場面で不思議の国の王様が兵隊を引き連れ、「女同士で愛し合うとは許せん!死刑じゃ!」と叫び兵士をけしかけた。やっと「これって同性愛の話なんだ~」と気が付いた。一方劇では地上の国で男性同士のカップルが町を闊歩している。そして一人の男子高校生が不思議の国に行き、アリスが同性愛の罪で王様から死刑を宣告されているのを知り、彼女たちを守ることを決意。王様と対峙して「オレ、最初アリスに彼女がいるのを知ってショックを受けたけど、人はそれぞれ違う。俺たちにとってのフツーって、一人一人違ってていいんでね?」というキメ台詞で王様を説得してめでたし、めでたし。

観客は、他の学年やクラスの生徒、高校見学に来た小中学生、生徒の家族たちで、ジョークに笑うというごく普通の反応だった。息子の学校は制服なしの自由な校風とはいえ、普通の公立高校である。脚本はクラスの生徒が書いたものだが、このお芝居は大変人気で毎回観客が80名ほど入っていたらしい。

今やLGBTは公立高校の学園祭の芝居のネタになるレベルまで来ている。高校生たちにとって性的嗜好が一人一人違っていても、それはそれでフツーという認識なのだ。

女性活躍をどうしようか?と悩んでいるショーワな世代は、スマホへの対応力だけでなくダイバーシティへの認識を含めて頭を切り替えないと、本当にミレニアル世代においていかれてしまいそうだ。

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