環境産業の市場規模は2014年の105.4兆円から2050年には204.2兆円へと拡大か

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2016年09月14日

  • 伊藤 正晴

2016年7月29日に公表された、環境産業市場規模検討会「環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」(以下、報告書)によると、2014年の国内環境産業の市場規模は105.4兆円、雇用者数は255.7万人と推計されている。2000年からの推移を見ると、環境産業全体の市場規模は、世界的な金融危機の影響で一時的に規模が縮小した2009年を除いて拡大が続き、2014年は2000年の57.9兆円の1.8倍(年率4.4%成長)の規模にまで拡大している。環境産業は4つの分野に分類されているが、特に地球温暖化対策分野の市場規模が2000年の3.8兆円から2014年には9.8倍の37.7兆円にまで拡大していることが、市場全体の拡大に寄与しているようである。

環境産業の付加価値額も2009年を除いて増加が続き、2000年は28.0兆円であったのが2014年には1.5倍の42.4兆円にまで拡大している。地球温暖化対策分野が1.3兆円から8.4倍の11.3兆円に拡大していることの影響が大きいようである。また、環境産業の付加価値額がGDPに占める割合を見ると、2000年の5.5%から2014年には8.7%へと高まっており、環境産業の動向が日本の経済成長に与える影響が大きくなっていることがわかる。環境産業の雇用者数は、2000年の178.9万人から2014年には1.4倍の255.7万人へと増加している。付加価値額と雇用者数の動向を比較すると、環境産業における労働生産性が向上していることが示唆される。

報告書では、「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減」という長期的な目標が達成された場合の市場規模等も推計している。その結果によると、環境産業全体の市場規模は2020年が123.0兆円、2030年が150.9兆円と拡大が続き、2050年には2014年の1.9倍の規模である204.2兆円に達するとしている。温室効果ガス削減を背景に、地球温暖化対策分野の市場規模が拡大し、環境産業全体の市場規模の拡大に寄与しているようである。このように、統計的なモデルによる推計では環境産業の拡大が示されているが、実際に環境ビジネスに関わっている企業はどのように考えているのであろうか。

2016年8月29日に公表された「平成28年6月環境経済観測調査(環境短観)」によると、環境ビジネスを実施している企業から見た環境ビジネスの現在の業況DI(業況が良い-業況が悪い)は、16となっている。同時期での日本銀行「全国企業短期経済観測調査(日銀短観)」における全規模合計・全産業の業況判断DIは4であり、ビジネス全体に比べて環境ビジネスが好調であるとの認識がうかがえる。また、環境ビジネスの半年先と10年先の業況DIは18と22で、今後、業況がさらに上昇する見通しとなっている。

持続的成長には、経済成長と環境保護を両立させる「グリーン経済」が重要な手段として位置付けられているが、地球温暖化問題、水の問題、廃棄物の発生量の増大など解決すべき世界的な環境課題が存在している。公害対策などの経験や高い技術力を持つ日本の環境産業にとって、これら環境課題への取り組みは大きな機会と考えられよう。日本の環境産業が世界の持続可能性の向上に寄与するとともに、環境産業の市場の拡大が日本経済の成長につながることが期待される。

図表:環境産業の市場規模は2014年の105.4兆円から2050年には204.2兆円へと拡大か

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