ときめいたら買い物しよう

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2016年08月31日

  • 土屋 貴裕

アメリカのスーパーなどで買い物をする時に、「いつものアレが品切れだ!」という事態がしばしばある。国土が広くて物流も追いついていない印象があり、ハリケーンや大雪などの天災への警戒が呼び掛けられると、買いだめでスーパーの棚が空っぽになり、補充がなかなか追いつかない。

オンラインショッピングで消費パターンの変化はあるだろうが、店頭に並ぶ定番商品で品切れが起きるのであれば、定番ではない商品をオンラインで探すのも難しい。買える時に買わないと、いつ同じ商品を見かけるかわからない。

心に響く逸品を見つけたら、購入したいと思う一方で、お得な価格かどうかも気になる。その場合、返品が容易なので、他の店でより安く売っていたら、そちらでも購入し、最初に購入した商品は返品する列に並べば良いことになる。もちろん予算の制約があるはずだが、欲しいものは今しか手に入らないのだとすれば、所得の中で買い物をするのではなく、貯蓄の取り崩しや借金を含めて、今、使えるお金の額が予算制約になる。思い立ったら即行動。「ときめかない物は捨てる」という趣旨の本の英訳がアメリカでベストセラーになったが、そうした考えがアメリカ人に受け入れられたのは、普段からときめいたら買う、という行動をしているからかもしれない。

節約を志向する面もある。チラシに載っている特売商品が売り切れの時、「レイン・チェック」をもらえるスーパーがある。レイン・チェックとは、例えば野球の試合が雨天順延になった時、次の試合の入場券としてもらえるチケットのことである。これが転じて、スーパーの特売商品が品切れの際、次回、通常価格に戻ってもレイン・チェックを持っていけば特売価格で購入できるという仕組みである。

ところが、サービス価格は上昇しているのだが、2年近くにわたって財(モノ)価格が下落傾向にある。2000年代のドル安トレンドから、ここ数年のドル高傾向への転換による輸入物価の下落、原油などエネルギー価格の低下などが背景となる。アウトレット店などが増えて、デフレマインドとまではいかないが、価格が上がる前に慌てて買う必要性は低下しているのである。アメリカのGDPの7割を占める個人消費に、構造変化が起きつつあるのかもしれない。

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