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自動運転実用化への期待

2016年08月30日

松原 寛

7月、日本の自動車メーカーから最新の自動運転機能を搭載した自動車(以下、自動運転車)の発売が発表され話題になった。近年、日欧米の各自動車メーカーや部品メーカー、IT企業が自動運転車に関する開発状況や実証実験等をWebサイトで公開するなど、積極的に自動運転技術の開発に取り組んでいる。また、平成28年6月に内閣官房日本経済再生本部から公表された「日本再興戦略2016」では、「2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに無人自動走行による移動サービスや高速道路での自動走行が可能となるよう、2017年までに必要な実証を可能とする制度やインフラ面の環境整備を行う」など、日本政府も自動運転車の普及を後押ししている。日本政府は自動車の自動運転化を通じて、自動車関連産業の市場拡大など産業面の後押しをしつつ、自動車による交通事故を減少させて安全な道路交通社会を実現したい意向のようだ。

自動車による交通事故は、1年間にどのくらいの件数が発生しているのであろうか。警察庁が公表している統計資料「平成27年における交通事故の発生状況」によると、平成27年は約54万件(死亡者数は4千人強)発生しており、9割以上がドライバーの不注意や操作ミスによるものである。このように交通事故の要因のほとんどが人的ミスによるものであるならば、自動車の操作に人を介入させず、自動車の操作及び制御等を自動化すれば、交通事故の減少につながるはずである。

近年の自動車の安全対策としては、ドライバーのブレーキ操作を補助するもの(衝突被害軽減ブレーキ)や自動車が走行中に車線を逸脱するのを防ぐもの(車線維持支援)、自動車の横滑りを感知して自動車の姿勢を安定させるもの(横滑り防止)などのASV(※1)技術を搭載した自動車の普及が促進されている。この中でも「衝突被害軽減ブレーキ」を搭載した自動車は、非搭載車に比べ追突事故が8割程度減少したとの統計資料もあり、交通事故の減少に効果を発揮しているものと考えられる。

今後は、ASV技術のさらなる向上により、今まで以上に交通事故の減少が見込めるだろう。しかし、ASV技術を搭載した自動車であっても、その操作を行うのは人である。交通事故の要因のほとんどが人的ミスである以上、自動車そのものの技術の向上だけでは、交通事故の減少も頭打ちとなることが予想される。こうした状況の中でさらに交通事故を減少させるためには、自動車の操作及び制御等を完全自動化することが考えられるが、その実現には、自動車をとりまく道路環境のインフラ整備も必要になる。この両方を実現するものとして期待されているのが、情報通信技術を用いて人と道路と車両とを情報でネットワーク化することにより、交通事故、渋滞といった道路交通問題の解決を図る次世代の高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems)(以下、ITS)である。自動車の操作及び制御等の完全自動化に対応したITSの構築には、まだ時間を要するといわれているものの、人が主体の自動運転技術から完全な自動運転技術へと進歩して、より一層の安全性の向上が実現されることを期待したい。

(※1)Advanced Safety Vehicle(先進安全自動車)の略。先進技術を利用してドライバーの安全運転を支援するシステムを搭載した自動車。平成3年度に当時の運輸省を中心として「先進安全自動車」の技術の開発・実用化・普及を促進するプロジェクトが始まり、現在も続いている。

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