お祭りの効用

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2016年08月18日

  • 大和総研 顧問 岡野 進

夏はお祭りシーズンでもある。伝統的な地域のお祭りは夏だけではないとは思うが、花火大会や踊りや音楽関係のフェスティバルの開催など夏はやはりお祭りシーズンとの印象が強い。

弊社の本社がある江東区冬木は富岡八幡宮に近く、3年に一度の8月15日に行われる本祭りには大和総研の役職員が冬木町のお神輿の担ぎ手として参加する。大神輿54基が勢揃いして連合渡御する様子は壮観だ。筆者も2年前に担ぎ手として参加させてもらったが、来年の本祭りが楽しみで仕方がない。

お祭りの効用というとすぐに思い浮かぶのが、「観光」としての効果だろう。マクロの経済効果という言い方をすれば、個人消費の増加につながるという言い方になる。海外の観光客を呼び込めればいわゆるインバウンド消費を刺激することになり、「輸出」にカウントされる。伝統的なお祭りそのものの費用は宗教法人の支出であったり、町内会といった団体の支出であったりするが、これは「対家計民間非営利団体最終消費支出」の一部ということになると思う。

音楽関係のフェスティバルは商業的で大がかりなものもあるが、地域でボランティア活動的なものとして行われるものも増えてきたようだ。先日、友人が出演するというので見に行ったジャズのお祭りは、東京の区での取り組みで、公園やコンサートホールだけでなく、区全域で神社や飲食店なども演奏場所として利用し、バンドが中で演奏する無料巡回バスまで走らせるという大がかりなものだった。スタッフや出演者のほとんどがボランティアだそうだ。基本的に観覧は無料で、場所によって安価な飲み物の注文が必要になる程度であった。商店街などが主催者になったもう少し小規模の催しもいくつも取り組まれるようになった。伝統的なお祭りと同様にこうした取り組みも地域の風物詩になってきているようだ。

ところで、お祭りの効用ということになると、表立った経済効果だけでなく、「参加すること」の意義がかなり大きいのかもしれない。参加することの効用はただちに貨幣価値換算はできないが、参加する楽しみを与える効用の大きさは無視できない。さて2020年には東京オリンピック・パラリンピックという大きな夏祭りが開催される。これには多くのボランティアの参加が期待されている。メダル争いをTV観戦するだけでなく、お祭りに参加するということに大きな意義を与えたい。

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