もはやスマートフォンは"フォン"ではない?

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2016年07月21日

  • 大和総研 顧問 岡野 進

この間の連休に軽井沢にある友人の別荘を訪問してきた。自動車で往復したのだが、スマートフォン用の地図アプリをナビとして使ってみた。まず金曜日の夜の往路ではごく普通のルートで関越道から上信越道を通って碓氷軽井沢ICまで行ったが、そのあと、通常のバイパスではなく山を越えていく曲がりくねったルートを示され、疑問を感じつつもナビに従ってみた。夜の山道なので、すべての人にお勧めできるわけではないが、結果は問題なく到着し、所要時間も正確だった。

帰り道は、休日の夕方だったのでかなり混むことを予想していた。この地図用アプリのナビでは関越道ではなく北関東道と東北道を使うルートが提示された。相当大回りなので疑問に思ったが、試しにそのルートを使ってみることにした。実際、途中の渋滞は少なく比較的スムーズに帰宅することができた。所要時間も休憩を除けば、初めに提示されたものと2分ほどしか違わなかった。関越道を使っていたら渋滞に巻き込まれていたかもしれない。高速道路だけでなく一般道の渋滞情報もリアルタイムでしっかりと織り込まれているようだ。多くの読者には既知のことかもしれないが、この利便性の高さにはいまさらながら感動した。しかも無料のアプリである。

話題は少し変わるが、弦楽器の音の高さを調整するチューナーという電子機器がある。かつては調子笛や音叉などが使われていたが、電子的に音の高さが表示され初心者でも簡単に音の調整が可能なこともあり、人気を博している。しかし、これもスマートフォンのアプリで代替可能になった。すでにかなりの種類がでているが、チューナー専用機よりもフレキシブルに使えるものが多い。

これらに限らず、最近はスマートフォンでゲームを楽しんだり、本を読んだりする人も増えているようである。また切符類も格納できるので、紙の切符は必要なくなる。あらゆる「情報的」なものが一台に集約されるようになりつつある。いまや、私のスマートフォンは電話に使うことはあまりなく、人とのコミュニケーションはメールやチャットになり、新聞も読むし音楽も聴く、さらに上記のような使い方もするので、“フォン”と呼ぶのに違和感を覚えるようになってしまった。もはやスマートフォンは“フォン”ではないのだろう。

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