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IFIAR(監査監督機関国際フォーラム)東京招致の舞台裏

~国際機関の本部が東京にやってきた!~

2016年06月30日

引頭 麻実

今年の4月下旬IFIAR(International Forum of Independent Audit Regulators;監査監督機関国際フォーラム)本部の東京招致の決定が新聞で報じられたが、読者の皆さまはお気付きになっただろうか。IFIARの存在自体をご存じない方も多いだろう。しかし、これは日本にとって、エポックメイキングとも言うべき、大きな出来事である。

IFIARは2006年9月に設立され、監査監督における連携および協力を目的とした国際機関である。構成メンバーは、公認会計士・監査法人等を監督する国や地域の当局で構成されている。日本からは、金融庁および公認会計士・監査審査会が参加している。現在、51の国および地域が加盟しているが、常設本部はなく、各国持ち回りで会議が行われている。加盟国も多くなり、監査監督の重要性が増すなか、活動内容の拡大や、他の国際機関との一層の連携強化が必要となっていることなどを背景に、2014年4月、恒久事務局の設立が合意され、設立候補地の募集を行うことになった。欧州、中東、アフリカ、アジア・オセアニアの各地域から、日本を含む様々な国が名乗りを上げた。

実は日本における国際機関の本部の設置の状況を見ると、日本が中心となって設立したものや、国連など国際機関傘下のグループ機関を除くと、アジア生産性機構、国際熱帯木材機関など極めて少ない。ましてや金融関係では国際機関の本部は1つも日本に存在していない。実績のない日本がなぜ、今回誘致に成功したのだろうか。

筆者なりに勝因を分析すると大きく2点ある。まず、招致活動が、金融庁のみならず、官邸、外務省、財務省など政府挙げての動きになった点である。昨年12月に「監査法人の監視・監督のための国際機関(IFIAR)を日本に誘致する議員の会」という議員連盟が発足したことが大きい。今年に入り、招致が決定されるまでの間、官邸を含む各関係者は積極的にほぼ全ての加盟国にコンタクトし、日本の提案やそのアピールポイントおよび意志を説明するとともに理解を求めた。効果的な短期決戦の取り組みである。また、民間においても、昨年1月、資本市場にかかわる民間4団体((株)日本取引所グループ、日本公認会計士協会、(一社)全国銀行協会、(一社)日本経済団体連合会)が、日本の立候補について強い支持表明をしたことに続き、(一社)国際銀行協会、(公社)経済同友会、在日米国商工会議所、欧州ビジネス協会、(公社)日本監査役協会、日本証券業協会他4団体、東京商工会議所などが次々と名乗りを上げたことも追い風となった。もう1点は、プレゼンの内容である。当局へのヒアリングによると、大きく3つの点をアピールしたとされる。第一にIFIAR自身のメリットである。IFIARにはさらなるグローバル化が求められている。IFIARの加盟国・地域は前述の通り51だが、そのうち欧州が約6割を占め、アジアなど新興経済国の加盟はまだ十分ではない。監査の品質をグローバルに高めるには欧州以外の地域での加盟強化が必要と強調した。第二に日本の資本市場の規模が大きく、監査のステークホルダーが多く存在するということ。第三に経済的支援である。日本からは、東京での事務局開設および円滑な運営に貢献すべく、十分な額の経済的支援を表明。政府を挙げての取り組みであるが故、こうしたプロポーザルが可能となった。さらにその他のアピールポイントとしては、東京の卓越したリバビリティ(住みやすさ)が挙げられた。物価も安く、また人口当たりの犯罪率も低いことなど様々な根拠を列挙した。東京をよく知らないメンバーからは驚嘆の声が上がる場面もあったもようである。

見事に東京招致に成功したわけだが、日本にとっての意義はどうか。一般的には、国際機関の存在により、人的交流が活発化すると同時に情報が入ってくるようになるといわれるが、受け入れ側の準備ができていなければ、そのメリットを享受できないかもしれない。少なくとも資本市場を活用している企業の方々にIFIARの存在を知ってもらうと同時に、現在IFIARにおいてどのようなことが問題意識として挙がっているのか、それに対して、どのような解決策が議論されているのか、といったことにも興味を持ってもらうような仕掛けが不可欠となる。これはまさに日本社会への実装(インプリメンテーション)である。東京招致はゴールではない。実装に向けて、新しい道のりが始まった。

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