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環境中への化学物質の排出とSDGs

2016年06月22日

伊藤 正晴

我々の社会生活は、化学物質を原材料とした多様な製品を利用することで成り立っている。そして、製品の製造や使用の際に化学物質が環境中に排出され、廃棄物にも化学物質が含まれている。化学物質には、人や動植物などに悪影響を及ぼす恐れのあるものも少なくないが、その影響を科学的に明らかにするには長い時間と膨大な費用を要し、厳格な法規制による化学物質の利用規制には限界があるとされている。このような状況から、平成11年に事業者が化学物質の排出や移動を届け出るPRTR(Pollutant Release and Transfer Register)制度が導入され、現時点では462の化学物質が対象となっている。PRTR制度では、一定の条件に合致する事業者が届け出た化学物質の排出量(届出排出量)と廃棄物などとして事業所外や下水道へ移動した量(移動量)を把握するとともに、家庭などからの化学物質の排出量を推計し、公表している。

平成28年3月に公表された経済産業省、環境省「平成26年度PRTRデータの概要」によると、平成26年度の届出排出量は159千トン、移動量は224千トンであった。排出先の内訳は、大気への排出が144千トンで、届出排出量の90%を占めている。移動量については、事業所外への廃棄物としての移動が223千トンで移動量全体の99%を占めている。

対象となる化学物質の見直しの影響を除くため、継続して対象となっている化学物質について時系列で見ると、届出排出量と移動量の合計は平成13年度の516千トンから26年度は345千トンへと大幅な減少を示しており、特に大気への排出量が277千トンから128千トンへと減少しているのが目立つ。化学物質による環境負荷が大幅に低減していることを示唆しよう。ただ、直近の動向では移動量のほとんどを占める廃棄物が平成25年度の191千トンから26年度は201千トンへと増加している影響などで、届出排出量と移動量の合計が337千トンから345千トンに増えていることが気になるところである。

平成26年度の届出外排出量は240千トンと推計され、25年度の241千トンからわずかではあるが減少した。また内訳を見ると、家庭は51千トンから46千トン、移動体が68千トンから61千トンへと減少している。

2015年9月に開催された「国連持続可能な開発サミット」で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」で17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」が示された。目標12のターゲットで、「2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。」とされているなど、化学物質の管理の強化や環境への排出を減らすことが求められている。(※1)そのためには、化学物質の排出量等がどのように推移しているかを把握し、公表するPRTR制度が重要な役割を果たそう。また、国内はもちろん、海外においても化学物質の環境中への排出による汚染防止や、適切な廃棄物処理が課題となっており、高度な技術を持つ日本企業への期待があろう。日本の環境産業が、国内だけでなく世界全体の持続可能性の向上に寄与するとともに、これが日本の経済成長につながることが期待される。

(※1)環境省「持続可能な開発のための2030アジェンダ/SDG」に掲載されている「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(外務省仮訳)

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