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FinTechにかかわる銀行法等の改正法案に思うこと

「現に起きていること」と「これから起こるであろうこと」

2016年04月05日

金融調査部 主任研究員 横山 淳

FinTech(フィンテック)という言葉が、ちょっとした流行語となっている。新聞、雑誌、書籍、セミナーなど(もちろん、このコラムのその一つだが)、これだけ目にするようになるとは、以前は想像もできなかった。

もっとも、改めて「FinTechとは何か?」と問われると、明確に回答することは難しい。一般に、「FinTechとは、金融(Finance)と技術(Technology)を掛け合わせた造語であり、主に、ITを活用した革新的な金融サービス事業を指す」(※1)と定義されている。しかし、この定義から「FinTechとは何か?」をイメージすることは困難だ。何しろ、金融とITの融合なら、何でも含まれ得るような幅広い定義なのだから。

FinTechの代表例であれば、例えば、「ブロックチェーン」、「ロボ・アドバイザー」などを挙げることができる。確かに、これらはFinTechとして「現に起きていること」である。ただ、「現に起きていること」の背後には、多くの「これから起こるであろうこと」が控えており、その中には「現に起きていること」以上に未来の金融サービスに多大な影響を及ぼすものが含まれているかもしれない。そのように考えるのであれば、前述のような定義になるのも無理はない。

本題に入ろう、「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」(以下、改正法案)が、2016年3月に国会に提出された。

改正法案は、FinTech対応の一環として、いわゆる仮想通貨に関連する改正を盛り込んでいる。これを指して、一部の論者・報道などには、「仮想通貨を解禁」、「仮想通貨を通貨と認める」といった論調が見受けられる。しかし、これはミスリーディングな表現だろう。厳密には、改正法案の内容は、仮想通貨の売買などを業として行う仮想通貨交換業者に対して登録制を導入し、マネーローンダリング防止や利用者保護などのための規制等を整備するというものである。これらはいうまでもなく、2014年に起きた当時世界最大規模の仮想通貨の交換所(「取引所」)の破綻や、仮想通貨の普及に伴うマネーローンダリングやテロ資金供与に悪用されるリスクに対する国際的な懸念などを受けたものである。その意味では、「現に起きていること」に対処するという面が強いように思われる。

FinTech対応の改正としては、他にも、銀行による金融関連IT企業への出資を容易にするための議決権保有規制(いわゆる銀行法の5%ルール)の緩和がある。こちらは「これから起こるであろうこと」を意識する面が強いように思われる。

銀行が5%を超えて議決権を取得・保有することを新たに認める企業の範囲について厳格な定義を設けると、今後、どのように展開するかわからないITの動向に柔軟に対応することが難しくなる。しかし、広範な企業に対する出資を無制限に認めるのでは、銀行法上、議決権保有制限を設けている趣旨(業務・財務等の健全性、優越的地位の濫用や利益相反のおそれなど)を没却しかねない。

そこで、改正法案は、対象企業の範囲は「情報通信技術その他の技術を活用した銀行業の高度化若しくは利用者の利便の向上に資する業務又はこれに資すると見込まれる業務を営む会社」とかなり広範に定める代わりに、5%を超える出資の要件として、あらかじめ内閣総理大臣の認可を受けることを求めている。

「現に起きていること」であれば、対応策もある程度決まってくる。しかし、将来の技術革新等の「これから起こるであろうこと」に先回りして手を打つことは、そう単純ではない。当局の事前認可を要件に容認するという改正法案の方針は、一つの解決策だといえるだろう。もちろん、その際、認可の運用・実務が重要になることは言うまでもない。

(※1)「金融審議会 決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ報告~決済高度化に向けた戦略的取組み~」(平成27年12月22日)p.2(脚注1)

関連レポート
横山 淳「FinTech、仮想通貨などを巡る銀行法等改正法案の概要」(2016年3月25日)

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