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原油安は経済にはポジティブ

2016年01月08日

大和総研 顧問 岡野 進

原油価格が大きく低下している。WTI原油が1バレル36ドルというのは、2004年前半以来の水準である。原油価格を米国の生産者価格でデフレートした相対価格(グラフ参照)でみると、新興国の経済成長の加速が始まった2000年代初頭の原油価格に戻ってきたといえる。

さらに遡ってみると原油価格はもっとずっと安かった時代が続いていた。第二次オイルショックで高騰したものの、1986年には大きく暴落し、それ以降は、現在からみれば低位安定の時代が15年程度続いたとみることができる。米国の生産者価格指数(最終製品、1982年=100)でデフレートしてWTI原油価格を1982年価格に換算してみると、1986年から2000年までの15年間の平均価格は16ドルとなる。これは、現在価格に戻すと31ドルとなる。原油価格がさらに低下して、再びこうした水準で低位安定時代を迎えるのか注目である。

もともと原油価格というものは、モノの価格のようでいてそうではない性格も強いと考えられる。原油の平均的な生産コストはかなり低く、生産を維持するためだけのコストであれば1バレル10ドルに満たないとする見方も多い。つまり、それ以上の価格となっているのは、生産者側のカルテルの力の賜物であり、原油価格の大部分は地代的なものあるいは税金と同様ということができる。これはその他の多くの天然資源にもあてはまることだろう。それだけに原油価格など天然資源価格の決まり方には国際政治の要素が大きく影響し、単に需給関係だけでは予測がつかないということにもなる。

さて、原油価格が地代的なものだとすると、とどのつまりは他の生産的部門で生み出された付加価値からの分配における生産者側の取り分を原油価格が決めているということになる。原油価格が実質的に低下するということは、この生産者側に分配される部分が小さくなるということ、すなわち消費者側に残る部分が大きくなるということを意味する。

実際には、燃料費が低下してエネルギー価格全般が下がり、これは最終消費者の家計にプラスになるし、エネルギーを消費するほとんどの産業の利益にポジティブに作用する。最終消費も活発になり、企業の投資活動にも好影響を及ぼすので、先進国では最終需要増加の影響が出る。一方、生産者側はそれだけの所得が減少することとなり、需要の減少につながるという副作用がある。しかし、経済成長という観点からみればエネルギーを使う側の産業がいかに発展していくかが重要であって、原油価格の下落は最終的には世界経済にポジティブに作用すると考えるべきだ。

もっとも価格の下落が起きている最中はデフレ要因となるので、現在の世界経済のように全体としてデフレのリスクを抱えているときには、ただちにポジティブ面は表れてこない。しかし、いったん価格が安定してくると、それは経済成長を促す要因として作用してくると期待できる。

原油価格の長期的な動き

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