足踏みする中で「デフレ脱却」とは何かを考える
2014年12月01日
最近の消費者物価は横ばい圏での推移となっており、夏頃まで着実に進んできた「デフレ脱却」の動きは足踏み状態にある。この背景としては、2014年に入り円安による押し上げ寄与が縮小したことや秋以降の原油価格の急落などが挙げられる。我が国では、デフレからの脱却が最重要課題の1つになっていることから、デフレ状況に再び戻ることがないよう、今後の物価動向を引き続き注視する必要がある。
ところで、そもそもの話として、我が国にとって重要な「デフレ脱却」とは一体何だろうか。個人的な見解にすぎないかもしれないが、「デフレ脱却とは?」、「デフレ脱却を宣言する場はどこか?」、「デフレ脱却と日本銀行の『物価安定の目標』の違いは?」といった質問全てに明確な回答を示せる人は少ないように思われる。正直に言って、筆者も1番目の質問については答えられるものの、残りの質問に対しては十分な回答を持ち合わせていない。
まず、「デフレ脱却」の定義としては、政府による「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないこと」をそのまま利用できる。ただし、具体的な数値によって「デフレ脱却」が定められていない点には留意が必要である。これは、デフレ脱却を実現したか否かの判断は個別の数値にとらわれることなく総合的に行われるべき、との考え方を反映した表現と思われるが、日本銀行の「物価安定の目標(消費者物価の前年比上昇率で2%)」と比べて曖昧さが残る。
次に、デフレ脱却宣言は内閣総理大臣が行うことになると思われるが、どのような場で表明されるかわからない。例えば、閣僚会議になるのか、臨時の記者発表を行うのか、それとも有識者の意見を考慮するために経済財政諮問会議といった場を活用するのか不明である。また、デフレ状況にあるとの判断が「月例経済報告」で行われてきた経緯を踏まえると、その中に「デフレ脱却」の文言を加えることで、「デフレ脱却」を宣言する方法もあり得る。
最後に、「デフレ脱却」と日本銀行の「物価安定の目標」の違いについては、2013年1月22日に発表された政府と日本銀行の共同声明(「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」)が参考になるが、今一つ両者の違いがわからない。現状では、政府が「デフレ脱却」を宣言しても、日本銀行の「物価安定の目標」が実現できていない場合が起こりうるように考えられる。仮にそうなった場合には、国会などで、日本銀行が目標を達成できていないのに、政府がデフレ脱却宣言を行うのは時期尚早ではないかといった非難の声が上がる可能性がある。
12月の衆議院議員総選挙の結果を受けて成立する新たな政権でも、日本経済の最重要課題として「デフレ脱却」が掲げられることは間違いあるまい。しかし、以上のことを踏まえると、政府の「デフレ脱却」の実現に対する意気込みの割に、その詳細については不明瞭な点が幾つも残っていると言える。国民の理解をより深めるためには、「デフレ脱却」に関する情報発信等において、改善の余地がありそうだ。
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