世界の金融緩和は続く

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2014年11月07日

  • 大和総研 顧問 岡野 進

米国FRBは、10月29日の公開市場委員会でいわゆる量的緩和第三弾を終了させることを決めた。これは「予定通り」であって、市場にはサプライズではないものの、こうした大規模な量的金融緩和からの出口戦略がどのような影響をもたらすかについては、漠然たる不安心理も存在していることは確かである。

一方、まさにこの米国の量的緩和の終了に合わせたかのように、日本銀行は10月31日の政策委員会で、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定した。(1)マネタリーベース増加額の拡大、(2)資産買入れ額の拡大および長期国債買入れの平均残存年限の長期化で、具体的には、2つの対策が発動されることになった。

第一は、長期国債について、保有残高が年間約80兆円(現状より約30兆円追加)に相当するペースで増加するよう買入れを行うことである。金融緩和の「量的」部分の拡大である。イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営すること、買入れの平均残存期間を現在より最大3年程度延長し、7年~10年程度とすることとなっており、そうした買入れ方針を示すことで長期金利を低位安定させていくという政策を明確に打ち出している。第二は、ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約3兆円(従来の3倍増)、年間約900億円(従来の3倍増)に相当するペースで増加するよう買入れを行うこと、新たにJPX日経400に連動するETFを買入れの対象に加えることで、「質的」部分について緩和を強化するものだ。

この日銀の「量的・質的金融緩和」の拡大決定は世界の金融市場、とりわけ株式市場や為替市場に影響を与えた。今回の決定は市場参加者にはややサプライズであった。直接的に日本の市場がポジティブに反応したことはもちろん、米国が量的緩和を終えたところで日本がマネー供給役の肩代わりを始めたかの印象で、米国をはじめ他国の株式市場もポジティブな反応となった。

株式をはじめ資産市場における価格上昇は、世界景気にとっては、資産効果による消費増大への期待や金融市場の安定への心理的効果からプラスであると判断できる。とはいうものの、世界的に民間企業の実物投資行動を積極化させるところまでの効果を持ちうるか、今後の経済状況を観察していかなければならないだろう。欧州の景気や金融情勢に対してもプラスであると思われるが、欧州自身が本格的な量的緩和政策に踏み込んでいくことが不可避になってきたのではないだろうか。

米国の量的緩和第三弾終了は、実は世界経済でみれば、次の大幅量的金融緩和時期の到来を告げるものだったのかもしれない。

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