持株会社化セミナーを終えて

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2014年10月29日

  • 樺澤 敏男

1997年の独占禁止法の改正により純粋持株会社が解禁されて以来、持株会社体制に移行した上場会社は年々増加し、現在400社を超えるまでになった。この数字は、先行して持株会社体制に移行した会社のその後の推移が経営体制の成功事例として徐々に社会的に浸透し、多くの経営者の方々にとって、「持株会社」が経営戦略の具現化の為の組織体制として認識されてきた証左であるといってもいいだろう。

こうした流れを背景に、大和総研は、7月4日と7月9日に東京、9月12日に大阪にて計3回に分けて、「持株会社化セミナー~経営者が考える持株会社の活用~」を開催した。

「企業価値最大化の為の企業統治体制を如何に構築するか」という時宜に合った経営のテーマに本セミナーがマッチしていたのであろうが、ご出席いただいた会社数及び参加者数は計106社124名と、大変ご好評を得ることが出来た。

さて、このセミナーの出席者に持株会社体制移行に関するアンケートをお願いし、8割を超えるご回答いただいたのであるが、そのエッセンスを幾つかご紹介したい。

まず「持株会社体制を検討する目的」については、「グループ戦略機能の強化」との回答が約7割あった。次に多かったのは「M&Aの推進強化」で、以下「組織の活性化」、「意思決定の迅速化」、「事業選別の強化」、「事業別の柔軟な制度設計」と続いている。その他「新規事業推進」との答えも見受けられた。

一方で、「持株会社体制を検討するにあたっての課題」については、一番多かった回答は「責任・権限の設計」で、約半数の方が「責任・権限の設計」を高いハードルだと考えている。以下、「持株会社の収支設計」、「グループ人事の設計」と続いている。懸念事項としては、「管理コストの増加」、「グループ求心力の低下」、「セクショナリズムの増大」や「技術の伝承、技術マネージメント」という声が寄せられた。

こうした回答から、経営幹部の方々にとって、企業価値最大化の為の最適な企業統治体制を考える上で、持株会社体制は充分に一つの選択肢となるものであると位置付けられている一方で、持株会社化という外形を整えるだけでは万能の解決策になるわけではなく、むしろ「仏作って魂入れず」にならないように、実際の運営を如何に円滑に効率的に行っていくのか、持株会社をグループの司令塔として機能させ、グループ価値を最大化させるためには、どのような工夫が必要になるのか、という点を考慮していることが窺える。

一口に持株会社体制といっても、その中身は各社各様であり、ビジョン、経営戦略の具現化や経営課題の解決の為の組織の仕組みや運営ルールは文字通りハンドメードのものとなっている。言い換えれば、全ての持株会社は似て非なるもの、すなわち一つとして同じものは無いといっても過言では無い。

従って持株会社体制に移行する上においては、自社のビジョンを明確にし、それに沿った経営戦略を策定し、それを実行していくために相応しい組織・人事体制や運営ルールはどのようなものかを導き出し、実際に構築していくという一連の膨大な作業が必要となる。

持株会社への移行を検討する際は、こうした経営の意思決定から実際の体制構築という上流から下流までの過程をワンストップサービスで提供することに強みを持つ大和総研を是非ご活用いただきたい。

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