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個人消費が減った割に財布の中身が増えないワケ

2014年09月30日

金融調査部 主任研究員 長内 智

この前まで官庁に出向して働いていたことやエコノミストという職業柄からか、消費税に関して質問される場面がしばしばある。先日の友人達との集まりでも、消費税率引き上げ後に個人消費が大幅に減少したというニュースを最近よく見るが、消費が減っている割には自分の財布の中身が増えていないという話題になった。そのときは大して考えずに回答したが、冷静に考え直してみると非常に面白い論点である。そこで、この疑問について今回改めて考えてみたい。

まず、個人消費の定義の違いについて整理しよう。ニュースで取り上げられる個人消費とは、現実の支出額に相当する「名目消費」から「物価水準」を割り引いた「実質消費(=名目消費÷物価)」のことである。このため、消費税率引き上げ後の個人消費の減少率は、「現実の支出減少分-物価上昇分」という式で求められ、計算上、個人が減らした支出額よりも消費税率の引き上げに伴う物価上昇分(今回は約2%)だけ減少幅が大きくなる。わかりやすく言い換えると、個人の財布から実際に出ているお金は、ニュースで見る個人消費の減少幅よりは約2%多くなっている。

次に、比較する時点が重要である。個人消費の大幅な落ち込みは、消費税率引き上げ前の駆け込み需要を含む1-3月期と駆け込み需要の反動減が出た4-6月期を比較した結果であり、どうしても減少幅が大きくなりやすい。実際、個人消費をGDP統計の名目家計最終消費支出で見ると、4-6月期は1-3月期に比べて▲3.4%と大幅な減少を記録した。それでは、一年前と比較した場合はどうだろうか。4-6月期の名目家計最終消費支出は前年比▲0.2%と昨年と概ね同水準であり、個人は支出額を必ずしも減らしていない。すなわち、財布の中身が増えていないと思う人は、まず昨年と今年の支出額を比較してみる必要があるだろう。

最後に、財布を開ける頻度の多いスーパーでの支払額は以前より増えている可能性がある。食料品や日用雑貨は家電などの耐久財と比べて買いだめしにくいため、スーパーの売上高は前年並みまで回復しているところが多い。しかし、これは税抜きベースの数字であるから、消費者の実際の支払額はその売上高に消費税率引き上げ分を加えた額になる。つまり、個人の財布からは去年よりも消費税率引き上げ分だけ多くのお金が出て、スーパーのレジの中に消えているのである。

以上のように考えると、消費税率引き上げ後の個人消費の大幅な減少は、必ずしも財布の中身を増やしてくれないことがわかる。当然、去年よりも懐具合が良くなっている人もいるだろう。ただし、周りを見渡すと、そのほとんどは勤め先の業績改善に伴って給与やボーナスが増加した人たちに限られている。

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