「オタク」文化とクールジャパン

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2014年09月08日

  • 間所 健司

「オタク」という言葉は、1980年代ころから使われており、仲間内で二人称を「お宅」と言っていたことからはじまったと言われている。はじめはひらがなで「おたく」だったものが、カタカナの「オタク」になったことで一般化されたとも言える。「ヲタク」と表記することもある。同様に、漫画も最近では「マンガ」と表記されている。

ではそもそも「オタク」とはいかなる人を指すのであろうか。

広辞苑(第六版)によると、「オタク」とは、特定の分野・物事にしか関心がなく、その事には異常なほどくわしいが、社会的な常識には欠ける人。と定義している。一方、「マニア」は、一つの事に異常に熱中する人。と定義し、「フリーク」も、一つの事に取りつかれたように夢中になっている人。と定義している。

筆者としては、オタクの説明で、「社会的な常識には欠ける人」という部分にはサブカルチャーへの偏見を感じるため異論があるところではあるが、マニアの語源がギリシャ語の「狂気」であったり、フリークの元々の意味が、「変種や奇形」であることから、いずれも本当は使いにくい言葉であると言えそうだ。また、オタク、マニア、フリークのほかにも、かつては、○○バカとか、○○狂などの呼び方もされていた。

結局、オタクも、マニアも、フリークも、実際の用法としては、かなり曖昧な使われ方をしているのが現状ではないだろうか。

「オタク」の祭典といえるのが「コミックマーケット(通称コミケ)」である。コミケは、マンガの同人誌や同人ゲームなどを販売するイベントで、年2回開催されている。出展者だけでなく、来場者もアニメやゲームのキャラクターに扮する「コスプレ」が人気を集めている。その人数たるや、季節外れのハロウィンといっても過言ではない。

2014年8月15日から17日の3日間、「コミケ86」が有明の東京国際展示場(東京ビッグサイト)で開催された。来場者数は3日間で55万人と2013年12月に開催されたコミケ85の来場者数52万人を3万人上回った模様である。コミケは同人誌等の即売会とのイメージが強いが、KADOKAWAや日本一ソフトウェア、マーベラスといった上場会社も数多く出展している。コミケ87が2014年12月28日から30日の3日間、同じく東京ビッグサイトで開催される予定である。

オタクの市場規模は、矢野経済研究所によると2010年度の7931億円、2011年度は8920億円、2012年度は9522億円(予測)であるという。このペースで行くと2013年度では1兆円を超えていることが予想され、海外を含めると巨大なマーケットを形成している。オタク市場は、今後とも成長し続けていくことが期待されている。

国内菓子市場が3兆円規模、飲料市場が3.5兆円規模でほぼ横ばいを続けていることを考えると、成長を続けるオタク市場はきわめて魅力的な市場であるといえる。一方で、オタク市場は、菓子や飲料と異なって、つかみどころがなく、その対象も広範囲にわたるため、ビジネスで成功するには「オタク」を理解し、受け入れられるものとする戦略と努力は欠かせない。

経済産業省が2014年7月に公表した「クールジャパン政策について」では、アニメなどのコンテンツ、ファッション、食、地域産品など、日本の生活文化の海外展開に対する様々な支援により、日本の経済成長につなげることとしている。特に「クールジャパン」というと、日本のアニメ・マンガ・ゲーム文化等を世界に発信していくという意味で使われる場合も多く見受けられる。また、日本食が世界遺産になるなど、世界的にも日本文化の魅力を発信することで、国際的理解を深め、新しいビジネスチャンスに昇華させていくことが必要であろう。

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