理系学部へ入学する女子学生の動向

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2014年08月28日

  • 伊藤 正晴

日本の成長戦略の柱の一つに女性の活躍推進が挙げられ、産官学のさまざまな分野で女性の活躍が期待されている。科学技術の分野でも、多様な視点や発想により研究活動を活性化するなど、女性研究者の活躍が期待されている。そして、女性研究者の人材プールとなる大学等の理系分野に進学する女子学生を増やしていくための施策が実施されている。例えば、内閣府男女共同参画局では「理工チャレンジ」、独立行政法人科学技術振興機構は「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」などにより、理系進路選択の支援を行っている。また、企業や大学などでも理系に興味を持つ女子中高生等を対象としたイベントの開催など、さまざまな取り組みがなされている。そこで、文部科学省の「学校基本調査」により、理系学部への女子学生の入学者数の動向を見てみた。

大学の学部のうち理学、工学、農学、医学、歯学、薬学を理系学部とし、平成5年度から26年度までの入学者数を調べてみると、これら理系学部における女子学生の比率は上昇傾向が続いており、平成5年度の17.3%から、平成26年度では24.6%にまで高まった。特に、平成23年度以降に男子学生数が減少傾向となっているのに対し、女子学生数は増加が続いていることで、平成23年度以降の比率が大きく高まったようである。

学部別に見ると、最も入学者数が多い工学では、男子学生数が平成11年度から減少傾向が続いているのに対し、女子学生数は平成13年度まではほぼ増加が続き、その後は減少した時期もあるが、再び平成21年度から増加が続いている。また、女子学生比率は平成12年度頃から11%前後を推移していたが、平成23年度に12.2%へと上昇し、直近の平成26年度では14.0%にまで上昇した。次いで入学者数の多い理学の女子学生数は平成6年度以降、ほぼ横ばいが続いており、女子学生比率も27%程度を推移している。農学は、理学や工学に比べて女子学生比率が平成26年度で45.1%と高いが、平成24年度まで女子学生数の増加傾向が続いた後、横ばいとなっている。このように、各学部によって女子学生数の動向は異なっているのであるが、最も学生数の多い工学の女子学生数の増加が、最近の理系学部に入学する女子学生の増加や、女子学生比率の上昇の主因となっているようである。

自然科学系研究者・技術者に対してアンケート調査を行った「『第三回 科学技術系専門職の男女共同参画実態調査』男女共同参画学協会連絡会(2013)」によると、小中高時代の進路選択に影響を与えたものとして、「授業内容」、「家族、親戚からの影響」などで女性の選択率が高いことから、「女性は、周囲の大人からの影響が、科学技術系専門職への進路選択に影響しやすいとも言えるので、こうした環境を積極的に整えていくことが、女性専門職を増やす上で効果的であると期待される」としている。また、年代別・性別に見ると、「学校あるいは学校外の各種取り組みについては、若い年代の女性の選択率が他グループより高かったことから、近年の様々な取り組みが女性の科学技術系専門職への進路選択促進にある程度貢献していると考えられる」としている。女子中高生等への理系進路選択の支援への取り組みが女性研究者の増加につながり、日本の成長に寄与することを期待したい。

理系学部入学者の女子学生比率と各学部の女子学生数

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