2014年はロボットの年?
2014年07月29日
10年後に振り返ってみれば、2014年はロボット産業が社会に広く認知された年と記憶されるかもしれない。最近の出来事をいくつか拾い上げてみる。
第一に安倍政権の取組姿勢。6月24日に政府は『「日本再興戦略」改定2014』(※1)を閣議決定したが、その中で1年前と比べて取り上げ方が大きくなった項目の一つに、ロボット戦略がある。ロボットによる新たな産業革命の実現のため、「ロボット革命実現会議」を本年夏までに立ち上げ、現場ニーズを踏まえた具体策を検討し、アクションプランとして「5か年計画」を策定するほか、2020年までにロボット市場を製造分野で現在の2倍、サービスなど非製造分野で20倍に拡大するとされた。これには製造業やサービス業等での人手不足分野における働き手の確保、物流の効率化、さらには災害対応など、様々な分野でロボットに期待されているという背景がある。7月24日時点ではまだ、「ロボット革命実現会議」はスタートしていないが、今後具体化していくと思われる。
第二にロボットの現状分析の広がり。7月17日にNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は「ロボット白書2014」を発表した(※2)。ロボットの定義、歴史、技術要素、取り巻く環境、産業用ロボット、サービスロボット、フィールドロボットなどについて詳しくまとめられており、ロボットに対する知識の共有やコンセンサス構築に役に立つであろう。
第三に象徴的な企業の登場。例えば、ロボットスーツ「HAL(ハル)」を手掛けるベンチャー企業の「CYBERDYNE(サイバーダイン)」が3月26日に東証マザーズに上場した(※3)。またソフトバンクは6月5日に、人型ロボット「Pepper(ペッパー)」を来年2月に19.8万円で販売すると発表した(※4)。今までも多くの企業がロボットを開発、事業化してきたが、新しい企業が参入してきたことで世間の関心は一段と高まっているようだ。
以上のように、ロボットの本格的な普及に向けて環境は整いつつある。しかしながら、克服すべき課題も多い。超高齢社会を迎えるにあたり、開発が期待されている介護ロボットを例に、具体的な課題を検討してみよう。
介護ロボットは、今後増加が予想される高齢者や要介護者に対し、介護人材不足を補う、介護する人の負担を軽減する(特に腰痛)、介護される人の自立を支援する等の役割が期待されている。ただし、サービスの対象が人間であることで、「快、不快を感じるレベルは十人十色」「安全性が極めて重要」などが要求される。また、「全介助は本人の身体機能を低下させてしまう恐れがある。むしろなるべく座らせたり、移乗時に足をつけるようにするなど、部分介助で機能改善をはかる方が良い。」などの指摘もある。これらは効率性が優先される産業用ロボットとは異なる点であろう。
まずは、現在行われている介護業務全体を見直し、現場の声を聞きながら、ロボット化に適しているもの、相応しくないものの業務仕分けが必要であろう。またサービス分野におけるロボット化が各分野で展開していく中で、介護分野にも応用できる技術が見つかる可能性もあろう。
介護ロボットの開発はまだスタートに立ったばかりである。産学官民の総力を結集した取組が期待される。

(※1)首相官邸HP
(※2)NEDO「ロボット白書2014」
(※3)CYBERDYNE HP
(※4)ソフトバンクHP
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米中間選挙後の注目点①:「変わる政治」
民主党優勢で高まる政治の停滞と不確実性
2026年10月27日
-
利用広がる議決権パススルー
投資信託のリテール顧客による議決権行使の選択が現実のものに
2026年10月26日
-
日本版米国型AWMビジネスモデルを創出するための条件
~投資銀行型と商業銀行型の比較~『大和総研調査季報』2026年秋季号(Vol.64)掲載
2026年10月26日
-
次世代の「地域金融の課題と競争のあり方」
~最新データに基づく地域銀行の競争可能性の再試算~『大和総研調査季報』2026年秋季号(Vol.64)掲載
2026年10月26日
-
子どもが幼いうちは子育てに専念したい世帯にも目配りを
2026年10月26日

