人手不足は良いことです

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2014年05月23日

  • 小林 卓典

労働需給が次第にタイトになり、人手不足に悩む企業が増えているようだ。3月の完全失業率は3.6%に低下。性別では男性が3.7%、女性が3.4%と、前回の景気回復期でもっとも失業率が改善した水準に男女とも並んだ。失業者数は雇用情勢が大きく悪化した2009年7-9月期から2014年1-3月期までに122万人減少し、237万人となった。

このまま労働市場が引き締まっていけば、やがて広範囲で賃金は上がり始めるはずだが、景気悪化によって生じる需要不足型失業と、企業が求める人材の技能、年齢などの条件と、労働者が持つ技術などの特性や希望する職種、勤務地などの条件とのミスマッチから生じる構造的失業がどの程度存在しているかがポイントとなる。

景気回復で需要不足型の失業が減少し、完全失業率が構造的失業率に接近するとともに賃金が上がると一般には理解されている。ただ需要不足型失業と構造的失業をデータから明確に区別することは簡単ではない。下のグラフは総務省の労働力調査から、失業者がどのような理由で仕事につけないでいるかを、2009年7-9月期と、直近の2014年1-3月期で比較したものである。

この中で、6「条件にこだわらないが仕事がない」は、明らかに需要不足による失業である。1「賃金・給料が希望とあわない」、2「勤務時間・休日などが希望とあわない」、3「求人の年齢と自分の年齢とがあわない」、および4「自分の技術や技能が求人要件に満たない」は、構造的失業にあてはまるだろう。ただ、失業者数がもっとも多い5「希望する種類・内容の仕事がない」は、需要不足によるものか構造的なものなのか判然としない。

実際には長引く景気停滞の中で需要不足が慢性化し、仕事を見つけることの困難さから、労働者の技能が時間とともに劣化するなど、需要不足型失業から構造的失業に転化したものも数多くあったはずだ。いずれにしても、1から6までの全てで失業者数は減少し、労働市場はここまで順調に改善している。

結局、景気が回復すれば需要不足型か構造的かを問わず失業は減る。人手不足に悩む企業は賃金などの雇用条件を見直し、あるいは効率化を図る設備投資を行うなど対応を図る必要があろう。またそうした企業の姿勢の変化が景気回復の持続性を強化する効果を持つということになる。

仕事につけない理由別完全失業者数
 

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