女性の活躍促進が人手不足解消の第一歩

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2014年05月12日

  • 齋藤 勉

現在、グローバル経済を見る上で、重要な視点の一つが労働市場である。

FRBのイエレン議長は、米国の労働市場には大きなslack(余剰資源)が残っているため注視が必要であるとしており、米国経済、金融政策の先行きを見通す上で、労働市場のslackの動向を見極めることが重要となっている。EU諸国でも、景気は徐々に回復色を強めているものの、失業率は依然高止まりしている。

一方で日本においては、2014年2月の失業率が3.6%となり、2007年7月以来の低水準を記録した。足下では、失業率が欠員率とほぼ等しい状態になっており、いわゆる「完全雇用」が近づいているとも言われている。

欧米諸国と日本でこのような差が生じているのは、日本で労働力人口が減少しているためである。少子高齢化で総人口が減少するなか、団塊の世代が定年退職する年齢に達し始めたことで、働く人の数が足りなくなっているのだ。

特に、いわゆる生産年齢である15歳~64歳の男性の労働力人口は、1990年代後半をピークに減少が続いており、人手不足の大きな要因となっている。しかし、同年代の女性の労働力人口を見てみると、増加こそしていないものの、おおむね横ばい圏での推移が続いている(図表1)。女性の人口自体は男性と同様減少が始まっているが、労働参加率の上昇が続いていることで、女性の労働力人口は減少せず、人手不足を一定程度緩和しているのである。

こうした動きの中で、就業者数全体に占める女性の割合も上昇が続いている(図表2)。ただし、就業者数に占める女性の割合が変化した要因を分解してみると、興味深い事実が浮かび上がる。すなわち、就業者数に占める女性の割合が上昇しているのは、主に産業構造の変化によるものであるということである。各業種における女性の就業者数の割合は変化していないものの、女性が多く雇用されている業種で就業者数が増加しているため、就業者数に占める女性の割合が上昇しているのである。

裏を返せば、労働市場における女性の存在感の高まりは、あくまで産業構造の変化によるところが大きいということだ。個別の企業や業界という視点で見れば、女性を積極的に登用しようとする動きはあまり進んでいないようだ。

しかし、今後も男性の労働力人口の減少が見込まれる中で、女性の労働力を活かすことができなければ、日本経済は今よりも深刻な人手不足に悩まされることになるだろう。日本経済の成長をより確かなものにするためにも、女性の活躍は不可欠である。安倍政権は女性の活躍促進を政策の目玉の一つとして掲げているが、政府だけでなく民間企業としても、女性を積極的に登用するような動きや、働きやすい環境を整える制度が重要になる。官民を挙げて、女性の活躍を促進するべく改革を断行していくことは、急務なのである。

図表1:男女別労働力人口(15歳~64歳)の推移

図表2:就業者数に占める女性の割合の変化の要因分解

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