エクセレント・パーソンこそ企業活力の源泉
2014年04月21日
今年も新入社員が入ってきた。研修期間が終わり、各職場に配属されるまでもう少し時間がかかる。職場で直接で接することはまだできないが、昼食時に社員食堂ですれ違う。新入社員のすがすがしさは、シニア社員も「初心に戻る」ことの大切さを気づかせてくれる。経営者も、彼ら(彼女ら)が将来の自社の屋台骨を支える重要な人材として成長することを望んでいることだろう。
ここで、ジャック・ウェルチの言葉を引用したい。彼はGEの元CEOで、「一に人材、二に戦略」と言うほど人材を重視したことで有名な経営者だ。彼は著書(※1)の中で、「適材適所の人員配置は戦略の構築よりもはるかに重要だ。そしてGEのリーダーに必要なものとして①活力に満ち溢れ、②目標に向かって周りの人間の活力を引き出し、③難しい問題でイエス、ノーをはっきりさせる決断力があり、④常に言ったことを実行する実行力があること」さらに「この四つは情熱によって結びついている」としている。
この情熱はどうすれば湧いてくるのだろうか。様々な要因が考えられるが、心身ともに健康であることが前提条件となる、このことに異論を唱える人はいないだろう。厚生労働省が実施した平成24年度「労働安全衛生特別調査(労働者健康状況調査)」の結果(平成25年9月19日発表)によると、現在の自分の仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスを感じる事柄がある労働者は60.9%に達している。その内容を見ると、職場の人間関係の問題が41.3%と最も多く、しかも前回調査(平成19年度)の38.4%から更に悪化している。一方、仕事の質の問題は33.1%、量の問題は30.3%に過ぎない。仕事の質・量以上に労働健康状況が大きな問題になっており、しかも年々悪化していることを示しているのではないだろうか。
従前、企業においては社員の健康に関しては安全(健康)配慮義務の履行というレベルから様々な取り組みが行われてきた。しかし、上記のような調査結果を見ると、人事戦略上の位置付けをもう一段高くする必要がありそうだ。具体的には、心身ともに健康であり継続的に企業業績を向上させる社員(エクセレント・パーソン)の育成を人事戦略上の重要課題と位置付けることである。環境や社会そして社員に配慮することが利益とトレードオフになると捉えずに、それらがそろって向上する施策が企業の持続可能な戦略と言えるだろう。それを成し遂げた企業だけが新たな成長ステージへ進むことが可能になる。
(※1)ジャック・ウェルチ『わが経営』(日本経済新聞社 2001年)
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