借金をするために借金をする
2014年03月03日
2008年のリーマン・ショック以降、長期にわたって負債を減らし続けてきたアメリカの家計は、2013年後半から再び負債を増やし始めた。負債の増加は広義の消費増加に繋がるため、アメリカ経済の成長を促すことが期待される。負債とは簡単に言えば借金のことで、借金をするには信用が必要となるが、アメリカでは日本と違った信用力の測定方法がある。
アメリカにおいて、クレジットカードを作ったり、住宅ローンを借りたりすることは一苦労である。収入が高かったり、金融資産が多かったりするだけではお金を借りることができない。お金を借りるにはクレジットヒストリーと呼ばれる「借金歴」が必要なのである。クレジットヒストリーは、自動車ローンやクレジットカードなど借金の種類や返済履歴などが記録されたもので、それぞれの要素を総合的に判断したクレジットスコアが決められる。借金をする際には、アメリカ人やアメリカで働く人に与えられる社会保障番号に紐付けられるクレジットスコアが確認される。
クレジットヒストリー、スコアを集計している企業は3社あり、基本的にこれらの会社に料金を支払って自分のヒストリーなどを確認するが、アメリカでは年に1度だけ無料で自身の状況を確認することができる(※1)。クレジットスコア算出時に考慮される内容は、たとえばExperian社の場合、借金の返済履歴(31%)、借金額の借入上限に対する割合(30%)、借入期間の長さ(15%)、借金の種類(14%)、信用照会の回数(10%)となっている(※2)。
クレジットスコアの算出基準を見れば、お金を借りる金額や返済の管理が十分にできるかが信用力に繋がっていることがわかる。いくらたくさんお金を持っている人でも、これまでに借金をしていなければ、借金との付き合い方がわからないと判断され、お金を借りることはできないのである。
借金をするためには、借金と付き合ってきた経験が必要であることはわかったが、それでは初めて借金をする人はどうしたものか。たとえば、銀行口座に1,000ドル預け入れ、残高以下の上限が設定されたクレジットカードの発行を受ける方法や、信用力が低いため高い金利を支払って、自動車ローンなどを組み、クレジットヒストリーを築いていく方法などがある。借金をするために借金をする。違和感があるが、信用力の測定には効果的な方法であろう。
(※2)Experian
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