2種類のオープンイノベーションで成長力と経営効率を高める

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2013年03月05日

  • 岡村 公司

安倍政権が掲げる経済政策の「3本の矢」の一つに「民間投資を喚起する成長戦略」がある。成長分野への政府予算の配分、経済成長に向けた規制改革、事業活動を促進するための税制改正などの政策を呼び水として、民間企業の積極的な投資を促し、中長期的な経済発展の基盤作りを目指す。他の金融政策や財政政策と比べると、より長期的な視点から経済発展を促進するための戦略である。

3月1日に新政権になって初めての総合科学技術会議が開催され、同会議の権限と予算を拡充し、科学技術イノベーション政策の司令塔機能を強化するという方針が示された。手始めとして、イノベーション戦略の全体像を示す「科学技術イノベーション総合戦略(仮称)」を2013年6月までに取りまとめる計画である。

実際のイノベーションは、いくつかの段階を経て実現される。使われる技術や産業分野にもよるが、革新的な技術や画期的なアイデアが生み出される萌芽期、新たな技術やアイデアが事業化される発展期、新事業の規模が拡大していく成長期などに分けられる。

日本では、萌芽期から発展期までに至るほとんどのプロセスを自社内または自社グループ内で行う「自前主義」が多かった。近年、情報通信の発展や新興国の台頭などによって世界的な市場競争が激化しており、日本でも、事業化の様々な段階で積極的に外部の経営資源と連携する「オープンイノベーション」が重視され始めている。

主体となる大手企業から見ると、オープンイノベーションには2つの側面がある。1つは、社外で進展してきた萌芽期や発展期のイノベーションを自社内に取り込む「外内」のケースがある。製品開発の段階などで異業種または同業種の大手企業同士が連携することが中心となると考えられるが、大手企業がベンチャー企業をイノベーションの推進役にすることも想定される。

欧米では、医薬品やIT分野の大手企業が関連分野のベンチャー企業を買収して成長を加速することが盛んに行われてきた。日本でも、医薬品大手とバイオベンチャーの事業提携等はまだ低調だが、IT分野では大手のインターネット関連企業が自社のプラットフォームに他社のサービスを導入させたり、ベンチャー企業を買収したりする事例は増えている。

もう1つの側面は、自社内で生まれた萌芽期や発展期のイノベーションを外部の経営資源と連携しながら切り出していく「内外」のケースもある。独立後における出身企業との関係の強弱によって、関係性が弱くなる「スピンアウト」や比較的強い関係性を保つ「カーブアウト」などと呼ばれる。他の自社製品・サービスと顧客層や事業モデルが異なる、新ブランドとして展開した方が効果的、用途開発などで他社との協業が欠かせない、潜在的な市場規模が小さいなどの理由から、スピンアウトやカーブアウトが行われることが多い。自社で手掛けるべき事業分野を再定義して経営の効率性を高めるという意味合いが強い。

経済政策の3本目の矢を具現化するには、2つの側面のオープンイノベーションが欠かせない。大手企業にとっては、外内・内外、両面において外部の経営資源と連携しながら事業の機動力を高めることが重要となる。オープンイノベーションで成長力や経営効率を高めて、世界市場を勝ち抜いていくような新事業を育てていくための具体的な対策が求められる。

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