今年は景気回復へ — デフレ脱却の条件も整ってくる

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2010年01月04日

  • 田谷 禎三
昨年1年はさまざまな変化、進展が世界経済にも日本経済にも見られた。その結果として、現在は、昨年の今頃に比べて、かなり先が見えるようになってきたのではないか。3つの点から今年を考えてみたい。

第1に、世界的な金融危機が収束過程に入っている。この問題は昨年春頃最悪期を脱し、金融機関やその他の投資家が追加的に負担しなければならない損失は大幅に減ってきている。イギリス中央銀行の推計によると、損失総額は3月時点で4.1兆ドルだったものが、6月には2.4兆ドルに、12月には0.4兆ドルにまで減少した。残された問題としては、危機の再発防止に向けた金融機関に対する規制監督の強化とその実体経済への影響がある。日本においても銀行の資本の質と量の強化が行われつつある。

第2に、金融危機を契機として、2000年代に入る前後から起こりつつあった世界経済の構造変化が加速してきている。世界経済に占める先進諸国経済のシェアーの低下と、エマージング諸国経済、特に中国経済のシェアーの高まりである。G7サミットは今年からG20サミットに取って代わられるようになった。今年も、先進諸国経済、特に欧米経済は住宅バブル崩壊による家計、金融機関のバランス・シート調整もあって停滞気味な状況が続くだろう。一方、エマージング諸国経済はインフラ投資の余地があるし、家計、金融機関のバランス・シート調整の必要がほとんどない。また、先進諸国の低金利は先進諸国自体に対する景気刺激効果は小さいが、資本移動を通してエマージング諸国の景気を加速させる。日本企業も東アジアを中心としてエマージング諸国の需要を取り込むべく努めている。

第3に、10年以上にわたるデフレも、今回の景気の回復とともに解消していくだろう。日本経済の問題は消費の低迷にある。消費の低迷は所得の低迷によるものであり、所得の低迷は雇用者所得の低迷による。雇用者所得の低迷は賃金の低迷によるところが大きい。特に1990年代半ばあたりから賃金の低迷が観察されるが、なぜか。それは、1995年から約10年間、日本の企業が過剰債務を減らすことに努めてきたためではないか。この間、非金融法人の債務残高は600兆円強から400兆円弱まで226兆円減少(この内約100兆円は金融機関によって不良債権として処理された)した。つまり、企業の利益はかなりの部分借金の返済に回っていたのだ。しかし、こうした調整もすでに終わったようだ。今後の回復局面では生産性の伸び程度の賃金の上昇も期待できる。賃金が伸びれば、サービス価格が上がり始め、物価指数全体の低下にも歯止めがかかってくるだろう。

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